エイユウの話~終章~
保健室にたどり着くと、クルガルはくたりとへたばる。彼女は豹型であり、もともと人を乗せて動くような魔物ではないのだ。二人乗せるなんて、彼女の根性だけが可能にした芸当である。
相変わらずキースは茫然としていて、クルガルはそれが頭にきた。
『しっかりなさい、魔禍の!』
怒鳴られたキースは、やっと我に返る。つぶれている姿こそ情けないが、クルガルの強い目がキースを捕えていた。見慣れたキースでさえ、動けなるほどだ。
慌てて保健室を見回したが、保険医はいなかった。キースはクルガルに手伝ってもらって、ラジィをベッドに乗せる。痛みが激しかったせいか、完全に気を失っているようだ。彼女をこんな目に合わせたのもキサカなんだろうか?その感想は疑問ではなかった。ただ信じられないという気持ちだけが、そう思わせているのだ。
茫然と彼女を見る。そう言えば、アウリーは大丈夫だったろうか。そう思い、窓の外から空を見る。下はこんなに荒れているのに、上は青々としていて、先ほどまで残っていた雲がひとつ残らず無くなっていた。こんな天気なら、中庭でそろってピクニックをしたくなる。久々に外に出れたのだから、みんなで楽しくやりたい。
やりたかったのに・・・。
キースの目から涙がこぼれた。湖面から溢れるそれは、とても美しい。だが、彼を酷い孤独へと導いた。
「ここにいたのか」
声に驚き振り返ると、アウリーを背負った心の導師がいた。いや、心の導師だけではない。緑や明、地、奏の導師がそろっている。皆で行動していたようだ。
心の導師がアウリーを下すと、同時に奏の導師が一番後ろから出てきた。彼は誰かを連れていて、キースはキサカだと思い、身を固くする。しかし、実際乱暴に投げ出されたのは、意外な人物だった。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷