エイユウの話~終章~
「え?」
一体何から逃げろと言うのか?周囲にも敵は見えず、ひとまずラジィを保健室に連れて行きたい気持ちでいっぱいだった。切羽詰まった彼は、彼女が心の魔術の使い手であることを思い出す。もしかしたら、キースが魔物喰らいの呪いにかけられる可能性があると、気付いたのかもしれない。
「呪いの事なら知ってる!だから皆で・・・」
「違います!キサカ君から・・・」
そう言いかけた彼女に向かって、大量の水が襲いかかる。悲鳴を上げたアウリーよりも、キースは攻撃を仕掛けた相手を見た。
「キサカ・・・?」
淡々とした表情をしているならよかった。彼は笑っていたのだ。にやりと、酷く楽しそうに。キースは立ち上がってキサカを問い詰めた。
「何してるの?相手はアウリーだよ?」
「ああ、『お仲間』だっけ?」
不敵な笑みを浮かべたまま、キサカはキースを見下ろした。もともと逞しいキサカの高圧的な態度は、相手を押しつぶすほどの威力を持つ。キースはその怖さに泣きそうになり、足がガクガクと震える。
遅かった。キースはすぐに理解する。危険だと判断したクルガルは、動かぬ主人を背に乗せて、保健室に向かって駆け出した。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷