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エイユウの話~終章~

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「魔物喰らいの呪い・・・ですか?」
 魔物が憑く、というところから、魔力が上がるのではとは思っていた。その前提があれば、本を見るだけですぐに正解にたどり着く。魔物喰らいの呪いも、魔力を上げる呪いだからだ。
 同時に、なぜ自分が選ばれたのか、キースは理解した。
 魔力の上がったキサカに対抗できるのは、きっと魔力の上がったキースだけだ。ともなれば、魔物喰らいの標的とされるのは当然である。
 しかし、難点がある。
「安全性は?」
「不明だ」
 だろうなと、キースは身震いする。小説に出てくる方法だ。その小説にノンフィクションの可能性があると囁かれていても、その真偽は否めない。
 つまり、魔物の肉を食べても生きていられるかも解らなければ、死なずとも魔力が上がるかも解らない。何の変化もないならまだいいのだけれど、下手したら魔力が無くなる可能性もある。
 そこまで考えて、キースはやっと理解した。だから彼なのだ。最高術師とは言え、準導師ほどの技術はない。いや、キースなら準導師くらい越えられるかもしれない。しかし、導師には敵わないのだ。けれども導師が魔物喰らいの呪いに負けてはいけない。もし万一があっては格好がつかないのだ。ノーマンに関しても同じだ。就職先の決まっている彼に何かあっては、それもそれで体裁が立たない。キサカが乗っ取られたということもばれてはいけないのだから、キサカが敵わなかった彼が負けた場合、それもそれで説得するのは難しいだろう。もとより、秋祭り終了後、卒業生が顔を出すことは皆無に等しい。
 それに対して、キースは説明も簡単だ。一年生なので就職先も何もない。学院祭で多少注目をされてしまっているが、キサカに勝利したのもぎりぎりだった。そのため、負けて亡くなったと言っても、世間的な批判も受けないだろう。親の説得だって簡単だ。といっても、キースは金髪ゆえに幼いころに親に捨てられ、田舎の孤児院で育っているので、その心配もないのだが。
 恐ろしいことが学園で企まれている。キースは思わず青冷めた。学園の利を基準に、生徒を利用する。学園側の管理ミスは、たまたまいた混血の生徒に押し付け、その掃除を勘違いされた生徒にさせる。
 それがこの学園の、今の導師のやり方だというのだ。
 動かないキースの頭を、流の導師がぐりぐりと撫でた。意外な行為に、キースは我に返る。驚いて彼を見ると、いつものような淡々とした顔をしていた。つい、甘えが出る。
「でも・・・、でも、キサカを止める方法は・・・ッ!」
「暴走した明の達人は明の達人ではない」
 そんなこと言われても、彼にとってはキサカはキサカだ。まだ間誤付く彼に、流の導師が声を荒げた。
「貴様はッ!明の達人に魔女と心の欠陥を殺させる気か!」
 そこでハッとする。キサカがキサカでなくなった場合、ラジィもアウリーも認識しないだろう。そうなったら彼は二人を手にかけるかもしれない。二人を守れるのはキースだけだ。彼が察したので、流の導師ははあと大きく息を吐いた。綺麗な紫色の瞳が、キースの姿を落ち着いて映し出す。
「だから言っている。逃げろ、と。彼女達を連れて」
 お礼も言えなかった。別れも言えなかった。いつものように、悪口も言えなかった。反射的に身をひるがえすと、彼は扉に向かって駆け出す。流の導師は、何も言わずにそれを見送った。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷