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エイユウの話~終章~

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「憑依型は他に例がない。だからこそ、何百年も前に憑依された者の名を使っているんだ」
 それを聞いて納得する。それから彼は、キースの金色の髪を見た。
「イクサゼルには法則がある」
「法則・・・ですか?」
 キースはそれだけで自分が監禁された理由が解った。正確性には欠けるが、おそらく間違いはない。彼が気付いたことを、導師は察した。
「ああ、『ゴパスである』という法則だ」
 なるほど。キースは納得した。この学園は導師がいると言うだけでなく、ゴパスのような魔力の低い者は入学できない。ゴパスを選んで憑依しているとは思えないので、きっとゴパスにしか憑依できないのだろう。そうなれば、ゴパスのいないこの環境では、次の器が見つからない。だから、憑依されている男を地下牢に閉じ込めておけば、その男の命が尽きるときに死んでくれるというわけだ。ちなみに、殺すことはできないらしい。魔力が高すぎて、どんな攻撃も武器も通用しないらしい。自分の魔力を防具に変えられる魔物は少なくない。
 つまり、その魔物に憑かれた男が脱走した、ということだ。
 不意に、導師の眉間にしわが寄った。それから、現状の判断とそれに至るまでの経緯を説明する。もちろん、タッパが特殊なゴパスであることも、だ。
 キサカについては説明をのぞいた。キースは、まだキサカがゴパスであると知らない可能性があったからだ。しかし、タッパという言葉を聞いたキースが、身を乗り出してきた。
「キサカは?」
 必死になりすぎて、導師がその事実を知らないかもと思い至らなかったようだ。もしかしたら、導師ならもう知っているだろうと考えたのかもしれない。どちらかは解らないが、少なくともキースはキサカの秘密を知っていた。その事実がある以上、導師に黙っていることはできなかった。
「今、確保に向かっている」
 キースがピクッと動いた。彼は今、確保という言葉に敏感になっている。遅れながらそれに気付いた流の導師は、いつもの無愛想な顔とは違い、少し慌てた様子になった。
「すまん、言葉が悪かった。乗っ取られる前に、職員室に庇う予定だ」
 流の導師がちらりと彼を見ると、少し驚いた顔をしていた。それからハッとして、唐突に謝罪してくる。ぼうっとしていたせいだろう。この辺が、嫌に真面目だ。
 治ったばかりの彼は、身を起して靴をはいた。
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷