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エイユウの話~終章~

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 水に乗って飛び出してきた彼は、五人を見るなり、飛び降りて駆けてくる。キースを小脇に抱えている。小柄な彼は軽いのだろう。とはいえ肩で息をしているキサカは、かなり疲れているようだ。
「大・・・変だ・・・っ!」
 今にも転びそうな彼に、アウリーが駆けよって肩を貸す。遅れてラジィが肩を支えた。彼がゴパスだと判明したことを忘れ、導師が説明を求める。
「これは何の事態だ」
「地下に・・・地下に繋がれてた男が暴れだした」
 地下に繋がれていたというだけで、すぐに導師はそれが何者なのか解ったようだ。彼の顔が一気に青褪める。
「事が事だから、キースを連れてきた。あんたらだって殺すつもりはないんだろ?」
 そう言われては、きっと皆が彼を責められなくなるだろう。命を奪うつもりはないと、彼らに宣言してしまった手前もある。
 下の方でドンドンと音が鳴る。キサカの言った「男」が暴れているのだろう。アウリーは不安になって、キサカを支えるために添えていた手をぎゅっと握った。気付いたラジィはアウリーの顔を見るが、服を握られたキサカはピクリとも動かない。珍しく、余裕がないようだ。
「とにかく、明の達人を保健室へ。金糸雀は・・・」
 導師が声をかけた時には、すでにノーマンとギールの姿はなかった。彼らは賢い。その行動力と早さに、導師は感心して思わず息を抜いた。
 導師に言われるがままに、アウリーとラジィは男二人を運ぼうと動きだす。
「魔禍の喚使は私が職員室に連れて行こう」
 保健室には保険医しかいない。満身創痍のキサカの治療にその時間は取られるだろう。そうなると、怪我を負っているもののキサカほど酷くないキースは後回しになる。けれども、職員室に行けば流の導師がいる。治療という分野に関しては保険医の方が上だが、放置するよりはずっといい。そのため、職員室に連れて行くという申し出を、導師はしたのだ。
 しかし、日ごろの行いがものを言う。非常に怪訝な顔を向けられ、生徒から信用がないことをはっきりと自覚しなければならない事態となった。何とか説明してキースを渡してくれたものの、導師は自分を情けなく感じる。
 さらに、キサカから追い打ちがかけられる。
「もしキースに何かあれば、俺らは導師を許さねぇからな」
作品名:エイユウの話~終章~ 作家名:神田 諷