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きらめき

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 13時10分、名古屋駅を発した“ひかり1469号” は、岐阜羽島駅との中間当たりで異常が発生した。
 計器類の表示が大きくぶれると共にスピードが上がり始め、制御不能となったのである。運転操作盤監視員は総合指令室に報告、指令を仰ごうとしたが、通話は閉ざされており、緊急通信でさえ機能しなかった。


 鹿児島行きひかり号は平日の昼間にもかかわらず、座席は8割方埋まっている。夏休みにひとあし先に郷里に帰るらしき母子と、各地の花火大会や祭りを楽しもうという熟年夫婦が多い。仕事で移動する人はほとんどが飛行機やリニア中央新幹線を利用しているが、のんびりと車窓からの景色を眺めたり、駅弁を食べるのも旅の楽しみだという人々にとって、旧来の新幹線は根強い人気が残っており、車両ごとには子供向け企画が練られていたこともある。


「わぁぁ、すげぇ、なんかすごいスピードで走ってる」
「ほんとぅ、景色が飛び去っていくぅ〜」


「暑くなってきたと思わない?」 
「エアコン入ってるか、乗務員が来た時聞いてみるよ」


「おいっ、この列車やっぱり、変だよ」
 などと、乗客たちが騒ぎ始めた。


 異常を感じた乗務員が運転室に駆け付けたが、汗を流している運転操作盤監視員のそばに立って見ている事しか出来ない。
 非常停止ボタンは作動しなかった。
 車両の電波の送受信が出来なくなっているようなので、乗務員は個人の携帯端末で通話を試みたが、それも含めたすべての電波が遮断してしまったのか、通じない。
 スピードオーバーの先頭車両は、カーブを曲がることが出来ず大音響を上げて脱線転覆し、ほとんどの車両は折り重なってつぶされジャバラ状となり、後部2両がかろうじて形状を留めたものの、側壁から勢いよく飛び出した。ぶら下がった最後部は、下の建物の屋根を勢いよくぶち抜いた。そのために最後部車両も大きく変形し、亀裂部からは赤い液体が滴り落ちていた。
 乗員乗客に生存者はいなかった。
 車両が降ってきた建物は倉庫であったため、崩れた積み荷と共に飛ばされてその下敷きとなり、ひとりが重傷を負っている。


 回収されたブラックボックスの破損がはなはだしく、調査は難航し、速度自動制御装置が作動しなかった原因は不明。その前に、最高速度に達していた理由がいろいろと論議されたが、岐阜羽島駅においてその暴走を目撃していた駅員の証言によって、コンピューターの電子制御装置の不具合が疑われた。

作品名:きらめき 作家名:健忘真実