きらめき
食糧庁を中心に官庁に探りを入れていた中林は古川主幹から、調査をやめるように、との命令を受けた。
これ以上続けていると秘密保護法に触れ、逮捕されかねない。同時に職を失うはめになるぞ、と脅されたのである。上の立場にある人から脅されて言ったのは、明らかだ。いつもの自信にあふれた目力がなかったからである。
あの小説にあったように、いよいよ日本でも戦争が始まるのかもしれない、という懸念を抱いた。
そんな時に、美穂から重大な報告を受けたのである。
「その中島君に会ってみたいね。近藤社長と犬山参事官がどんな話をしていたのか、詳しく聞きたい。愛知でも秋田でも青森でも構わない」
「分かった。私もも一度会っておきたいから。また連絡するわ」
中林は、六ケ所町で建設が進んでいる、原子力廃棄物処分場について調査した。原子力発電は、日本では廃止されている。今では、56基すべての稼働は止まっているが廃炉が手に負えず、そのまま放置されていたのである。周囲は厳重な壁で閉ざされて監視され、ごく一部の関係者しか入れないようになっている。核燃料等は、そこに残されており、一部の発電所では、未だに冷却は続けられている。しかし世間では、全く問題にされなくなっていた。存在そのものが、忘れ去られていたのである。
大方の雪が融けた頃、建設現場に足を運んだ。
そこでは大手ゼネコンを中心として、中小の、実に多くの会社が出入りしている事が分かった。考えられないほどの大量の土砂が海に捨てられ、地元の噂を拾うと、なるほど、巨大都市が建設されている事実が浮かび上がって来た。
資金は、それらの会社の裏金による。集めた情報では、武器製造に必要な部品を作っている、多くの会社の名前があった。
筋書きが見えてきたように感じた。