小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

和尚さんの法話 「地獄は存在する」

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

「――― 地蔵申して申さく、「聖母(お釈迦様のお母さんですね)、諸の罪人又つぶさに諸苦を受く。千百の夜叉、及び鬼等、口牙剣(こうげつるぎ)の如し。手に銅爪ありて罪人を拖拽(しえい)す。」
罪人を引き回すというんでしょうかね。

「又夜叉有り、火鉄を把りて罪人の身にあつ。或は口鼻にあて、或は腹背にあつ。」
焼けた鉄を罪人の身体にあてる。

「又鉄鷹有りて罪人の眼を食う。」
鉄の鷲ですわね。鳥なんだけれども、それが鉄で出来てるというんです。
あの世だから、どんなことでも有り得る。
この世で有り得ないことが、あの世ではいくらでも有り得る。
閻魔さんとか、菩薩方が神通力で現すわけですから。
ところが罪人にとったらそれが本当のように感じて辛い。

「又鉄蛇有りて罪人の首をまとい、肢節の内に長針を下す。或は舌を抜きて耕さしめ、腸を抜きて斬切し、或は洋鋼を口に注ぎ、熱鉄身に纏(まと)い万死万生業感是の如し。聖母、地獄の罪器等の名、及び諸の罪人の苦事を説かば、假令(たとい)一劫の中に説くとも尚尽くす事能わず」と。
摩耶夫人聞き終わりて愁憂し、合掌頂礼して退く。」
いろんな地獄があるわけなんですが、これはもう想像してもらうほかないですね。
一劫という時間は長いですね、それだけの長い時間、地獄のことを説明してもいろんな罪の地獄の攻め方があるというんです。
摩耶婦人が話しを聞いて涙を流しながらお地蔵さんの前から下がった。というんですね。

― 地蔵菩薩本願経 ―


これは、「地蔵菩薩霊験記」の中の一部分を引きました。
三、
加茂の朝臣盛孝、年四十三の時、俄(にわか)に病を受けて死去しけるが、即時に火抗に入りて頭は地を戴き、足は天を踏みてさかさまに落つ。其の速き事矢の如し。忽ち猛火の勢い眼に見えて叫喚(きょうかん)の声耳に響き、四方に震動して天地も崩れ大山も微塵になるべし(大きい山も叫び声が響いて粉々になるんですね。
)とぞ覚えて心神慌乱(こうらん)せり。盛孝、声を放って叫べども其の甲斐なく遂に琰王の宮廷に跪(ひざまず)く。数多の冥宮東西に羅列して百千の鬼ども市を成す。(閻魔さんの弟子が大勢並んでいるわけです)
盛孝胸を抱きて打つ伏してぞありし時、小僧一人来り給いしが、端正微妙にして除歩して現じ給う有様、日の光の山の端より出づるが如し。(山の向こうから太陽が照ってくるような、そういう神々しい感じがするんですね)
冥官鬼王共に頭を地に着けて敬礼し、「地蔵菩薩の来臨し給う」とぞ申し合えり。(お地蔵さんがお見えになったと言うて誰かが言うわけです)
盛孝泣く泣く合掌して申さく。「願わくは大士、大悲(お地蔵さんのことです)の誓願違うる事なく我を助け給え」と申す。(どうぞお慈悲を持って、私をお救い下さいませと、申したんです)
菩薩曰く、「来たり易く還り難しは是れ炎羅の国なり。汝已に罪有るに依りて召されて此処に至る」と。「されど又、捨つる可(べか)らざる事有り」と。地蔵盛孝を引きて琰王に向いて申す。「此の男子は是れ我に結縁有り、暫く寿算を述べて娑婆に帰し給えと。時に冥官曰く、「衆生の命運は元来定まれり。今更転ずべきに非ず。況や、彼の男は決定の業なり」と。(この盛孝という男は決定の業だから、だからどうしようもございませんと、閻魔さんが言ったんですね)
地蔵菩薩悲泣して曰く。「若し決定の業なれば我代わりて苦を受くべし」と。(業が決定してるんだったら、私が代わってその罪を受けましょうと、こう言った)
琰王冥官大いに驚き速やかに許し奉る由申さる。(お地蔵さんがそこまでおっしゃるのでしたら、もうお言葉どうりに致しますので。という許しが出たんですね)

菩薩喜び給い盛孝の手を引きて官門を出で給う。地蔵曰く、「汝古里に帰り仏を敬い僧を礼し、法を信じよ。再び此の所に来る事有るべからず」と、の給い手を放ち給うと思うに忽ち生き返りけり。後発心して一心に地蔵をぞ念じける。
(はっと、眼が覚めたら夢のような体験をしたんですね。)

― 地蔵菩薩霊験記 ―

地蔵菩薩霊験記にはいろんな話が出ていまして、またひとつにには、こういう話もありました。
或る泥棒が、弟子たちを連れて市中を荒らして、そして帰ってくるんですね。
帰ってきたら、橋が壊れてたんです。その橋の端に地蔵菩薩の像が立ってるんです。
そしてその賊の大将が、これを抜いて橋にせよというわけです。
地蔵は人を渡すのが仕事じゃと言うて、それを引き抜いて川を渡したんです。
そして皆が踏んで渡ったんです。
そしてその盗賊の大将が眠ってる間に地獄へ落ちていくんです。
閻魔さんの前に引き連れられて、いろいろ裁きを受けるわけです。
そこへお地蔵さんが現れるんです。
この者は、娑婆にいるとき私に縁のある者だから、この度は私に免じて許してやって欲しいと。
閻魔さんは、そんなはずはない、この人間は何一つとしていい事は無いと。
いったいどんな縁があるのですか。と閻魔さんが聞くんですね。
私の塔を川に架けて、そして渡ったんだ。
それはひどい、けしからんじゃないか。
お地蔵様を踏みつけにしたんじゃないですか。是はもうひとつ罪を増やさないといけませんと。
いやいや、縁には順縁と逆縁があるんだ。この場合は、逆縁と言うて、兎に角縁が有るんだ、悪いことになってるけれども、私に縁があるんだというんですね。
その縁によって救ってくれと言うたら、地獄へ落とす者がなくなってまいります。と、閻魔さんが許せん、許せんと言うわけです。
するとお地蔵さんは、私はお釈迦様のお説法を一座として外したことがないんだ。どの説教もどの説教も全部聞いてあるんです。だから私の言うことには間違いが無いんだと。押し切ってしまうんですね。
そしたら閻魔さんは、はあ、そうですか、そこまでおしゃるのでしたら、というてお許しが出たという。
これは芝居なんですよね。
閻魔さんとお地蔵さんがそういう芝居をして罪人を救っていくんです。
だから閻魔さんもそうだし、地獄の鬼も皆菩薩です。菩薩が化身してるんです。
罪人には優しい姿で言うたら効き目が無いから、恐ろしい姿になって、そしてああじゃぞ、こうじゃぞと、先ほどの罪人を攻めるいろんな道具が出てきましたが、皆神通力で現してるんです。
そして怖い思いをさせて、なるほど悪いことをしたらいかんなあと、いうことを心から悟って、そして許されていくということになるんですけどね。
そして閻魔さんの前から連れてかえって、悪いことをしたらこういうことになるんだぞと。
もう悪い事をせんようにと念を押すんですね。
で、承知しましたと。言うて背中をぽんと押されたら、はっと眼が覚めたんです。
それでもう家来を皆、解散して、もうその泥棒の仕事を辞めて真人間になったという話です。
だからもうどんな縁のある人間でも救おうというのが、お地蔵さんのご誓願でね。
兎に角全ての罪人が尽きてしまって、全部仏に成ったら自分も最後に仏に成るという誓いをたててるんです、お地蔵さんという方は。
仏教では、人間だけじゃなくて、犬や猫のような動物も、鳥も虫も魚も、霊魂には皆変わりはないんですよ。