moonlight 改稿版(前編)
「そ、そう?」
「そう! 世の中近づ離れずの距離で語り合うのが一番! ずんずん前に出たら、逆に言えなくなるし、無神経って思われてしまう。友達付き合いも駆け引きが重要だよ。大丈夫さ。時が来れば、そのうちあっちから悩みをぶつけてくるわよ」
「そう言われると、確かに……」
みちるの言い回しに、自然と納得してしまう。
「よし! 分かったんなら堅苦(かたぐる)しい話はもうおしまい! あーあ、活動開始から五〇分も経過して、日も落ちちゃったよ。誰かさんのせいで」
みちるは踵(きびす)を返して、定位置にあるエレキギターのケースを開く。
彼女に嫌味っぽく言われて、
「うっ……悪かったよ……」
そこには責任を感じたのか、ネオは素直に謝る。
「健斗も巧もすぐに準備をする!」
二人もみちるの指示に「うっス!」、「はい」と、自分の定位置で準備を始める。
「今日は総合祭で歌う楽曲の音合わせをするんだから、本番だと思ってやるように! 特にネオ!」
ビシッと、黒いエレキギターをストラップで吊るして左肩にのせた状態で、右手の人差し指で、ネオの顔を差す。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ