moonlight 改稿版(前編)
「まったく!」
フン! とネオは鼻息を鳴らす。
しゃがみこんだ健斗の頭を撫(な)でるみちる。
そんな二人をスルーするように、
「本当に、すごいですよ、ネオさん」
巧が話に入ってくる。
「そう?」
「は、はい。俺には、こんなこと、とても……」
自分を見つめる彼女の表情に思わずドキッとしたのか、巧(たくみ)は床を見てしまう。
「そう? わたしにとっては当然のことをしただけなんだけどなぁー」
三人に「すごい」と言われたことに、ネオは微苦笑(びくしょう)して見せる。
「それができるからすごいんだよ。普通ならそういうことはなかなか言えないよ」
みちるが立ち上がる。
「それにしてもこの子、いや、竹下さんにこんな特技があるとはね。美術家とか、何かを目指しているの?」
「うん。彼女、漫画家になりたいの」
「なるほどね。道理(どうり)で美術の教科書みたいな、古臭い絵じゃないってわけね」
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ