moonlight 改稿版(前編)
「私のことを、こんなに……」
涙が一滴、こぼれる。
大人しい性格だからなのか、今まで共に喜怒哀楽を分かち合える本当の『友達』と呼べる存在がいなかったのだろう。ネオに出会うまでは。
それが涙として、集約(しゅうやく)された。悲しいのではく、嬉しいのだ。
「ちょっ、ちょっと、実緒!」
泣いている彼女に、ネオは慌てふためく。
「わ、わたし、な、何か傷つけるようなことを言った!?」
「ううん。違うの。嬉しくて……」
大粒の涙がポタポタと白のカーゴパンツを滲ませる。
「もう、可愛い顔が台無しになっちゃうよ」
ネオは微笑みながら、ポケットにある水色のハンカチを取り出し、実緒の涙をやさしく拭いた。
――ひとり、じゃないよ。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ