moonlight 改稿版(前編)
「アニソンには、それしかないパワーが宿っているんですよ! ハイテンションにさせたり、J―POPにはない独特な曲調! そして、負けず劣らず、アニメから引き出された、現代に問うダイレクトなメッセージ性! 水木兄貴曰(いわ)く、『アニソンには勇気や夢や希望や正義など、人間が忘れてはいけないものがたくさん揃ってる』んですよ!」
「『ゼット!』の人がそう言ってもなぁ。わたし、わっかんないし……」
その一言に、どんだけもったいないことをしているんだこの人、と健斗は心の底から思う。
「うー、みっちぃ先輩ぃー」
泣きそうな呻き声をあげながら、隣にいるみちるに懇願する。彼女は、ネオに説得して健斗に歌うチャンスをくれた、唯一の救世者なのだ。
「そうだなあ……」
みちるは顎に手を置き、目を瞑る。そして、十秒も立たないうちに、何かを決断したように、パチッと目を開いて顎から手を離し、
「ネオ……やらせようよ!」
「みっちぃ先輩!」
みちるの決断に、健斗は目を輝かせる。
「ほ、本気で言ってるの?」
唖然とした顔でみちるを見つめるネオ。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ