moonlight 改稿版(前編)
「実緒がわたしを待っている!」と自分に言い聞かせ、自転車を押しながら坂を必死に歩いていった。
――それを乗り越え、ここに実緒の家に着いた。
おかげで喉はカラカラ、足はヨロヨロでサンダルを穿(は)いている感覚がなく、身体が悲鳴をあげている。やはり、陸上をやめたからであろうか。
「は、はやく……中に……」
このままこの日差しを浴びると、魂が肉体から飛び出そうだ。
ネオは家の前に自転車を置いて、カゴに入っているピンクのショルダーバックを取り、ヘビーな顔つきで前のめりになりながら、玄関の近くにあるインターホンを、
ピンポーン!
タッタッタッタ、とドアの奥から走ってくる音が聞こえてくる。
ガチャ! と扉が開き、
「あ、ネオちゃん」
「や、やあ……」
「……だ、大丈夫?」
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ