moonlight 改稿版(前編)
女子学生はチラッと机の上に置いてある紙を一瞥(いちべつ)する。コクン、とネオは頷く。
「まだ途中だよ」
それにうまく描けていないし、と彼女は見せるのを躊躇(ちゅうちょ)する。
「そんなのいいから、いいから! ね! ちょっと見せて!」
「あっ!」
ネオはジャイアニズムをむき出しにして、女子学生の机の上にある用紙を強引に奪い取り、
「どれどれー」
まじまじと彼女の絵を見つめた。
「やっぱり、うまく描けていない……よね?」
自信なさげにきゅっ、と女子学生は身体を縮こむ。
しかし、
「!」
その未完成の絵に、ネオは息を呑んだ。
――か、かわいい!!
ネオからしてみれば、それは黄金のように輝いていた。
ドレスを着た清廉(せいれん)な女性が、花畑で穏やかな表情で風を感じている。まだ花畑が完全に仕上がっていないが、この世のどこかに存在しているのかと思えるくらい、すごく生きているように見える。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ