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数式使いの解答~第二章 雪と槍兵~

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「ふう、これで、終わりか……?」
 肩で息をしながら、ローレンツが後ろの二人に尋ねる。
「ああ、多分、な……。というか、これ以上は無理だぞ」
「わたしも、もう無理……」
 ドサッ、という音が三つ続き、三人は雪上に腰を落ち着けた。
 周りには、ジャベリンペンギンの亡骸がいくつも転がっている。村の損害は軽微で、せいぜい表の柱が折れたり、村を囲っていた柵の一部が破られただけですんだ。三日もあれば元のようになるだろう。
 そんなことを三人が考えていたときだ。ふっ、とその人は姿を現した。
「お前さんがた、大丈夫かい?」
「大丈夫ですか? 皆さん」
 現れたのは、長老とシャノンだった。
 三人は姿のわからない影に一瞬の緊張を見せたが、影の正体が長老たちだとわかると、一度に気が抜けたようだ。
 はぁ〜、という長い三つのため息。
 その様子を見て、シャノンが、ふふ、と小さく微笑む。
「皆さん、大きな怪我もないみたいでよかったです。お疲れでしょうから、今日はウチにいらしてください」
 その言葉に、
「長老さん、オレまでお邪魔していいのか?」
 わずかに遠慮しながらヘルメスが訊く。
「構わんよ。むしろ来てもらわんと、村を守った戦士すら称えられぬ恥知らずになってしまうわい」
 カッカッカ、と長老は哄笑した。

 夜のこと。
 疲れきった体で、ご馳走と気持ちのいいお風呂を済ませ、いい感じにまどろみ始めたころだ。ふと、ヘルメスが口を開いた。
「なぁ、何かおかしいとは思わないか?」
 斜め向かいに座るローレンツが、
「なにがだ?」
 と訊き返す。
「いや、ジャベリンペンギンは一番槍がやられればすぐに撤退する動物だ。そんな臆病かつ慎重、狡賢い生き物が村なんていう大量にヒトが住む場所を襲うか?」
「今まで襲われたことはなかったの?」
 浮かんだ疑問をミリアが口にする。
 それに対して、
「ああ。今までは近くにこそ来ても、襲うことなど一度もなかった。それどころか、近づいてしまったことを悟るとその場で引き返していたほどだ」
 ヘルメスがそう答えた。
「つまり、雪山になにかの異変が起きた。そう言いたいのか?」
「その通りだ。最近、雪山の様子がおかしい。まるで独裁政治を布く王が現れたかのようだ」
 うう、と唸る。
 何分か無言が続き、考え込む。
 そして、ふっ、とローレンツは顔を上げて言った。
「よし! 明日、雪山に乗り込むぞ」
 その言葉は、翌日の予定を埋めるのに充分だった。