魔法使い、旅に出る
超局地的な降雨の為、犬宅に雨宿りのかぴー。
ちゃっかりしっかりシャワーと服を拝借していた。
「犬さん、ありがとうです☆ スッキリサッパリ☆」
はふ~と満足気。
かぴーの軽装に疑問を持った犬は荷物は? と尋ねた。
「荷物?」
えっとー、と言いながら小さな肩掛けバッグから一品一品取り出す。
「タバコ、財布、さくちゃん収納玉、地図、サバイバルナイフ、持ち歩き用空ポット2個と鍋とテントの入ったポット、パンツの入ったポット。以上☆」
ポットとは伸縮自在の丸い便利収納ケースの事で、持ち歩き用は見かけは直径3センチほどのガチャガチャのカプセルである。
「……昔さぁ、一切れのパンとナイフとランプをかばんに詰め込んで出かけるって内容の歌、あったよね」
「あったねぇ」
「ナイフしか入ってませんが?」
「や、ランプ要らないじゃない? パンは黴びるし」
「ランプ、要るでしょ」
「そうなの?」
呆れ顔の犬とキョトン顔のかぴー。
仲間内の歩く火炎放射器の異名通り、火を扱うかぴーの頭には火に関する物を持ち歩く習性はなかった。
そうこうしている内に子供たちが「はっ」と我に返った。
「「おかーさん!!」」
来たっ! と犬は身構えながら返事をする。
「な、なに?」
「「神様って居るんだね!!」」
「そうだね」
「「すごいね!」」
「そうだね」
「あのねあのね」
「聞いて聞いて!」
興奮気味に各々話し出す。
その様子を眺めながら、
「子供って元気だよねー」
『誰かさんとは違うわねー』
と二人は話していた。
☆
一通りの騒ぎが終わって呑気に雨が止むのを待っているかぴーと犬親子一行はヒマを持て余し、紙飛行機を飛ばしっこしていた。
「一休殿、飛ばすの上手いなぁ」
かぴーは感心して飛行機を眺めた。
誰よりも飛距離があるのだ。
「風の色を見て飛ばすの☆」
「風の色?」
「そうだよ。ちゃんと乗ると飛ぶんだよ」
「へぇ」
一休はブーンと言いながら飛行機を手にくるくると部屋を回る。
「一休は飛ばすの上手なの」
自分の事のようにさよ。
「だからお友達のお手紙は一休に飛ばして貰うの♪」
おかーさんには内緒だよ、ニコニコとさよは言い、一休とじゃれている。
「……だ、そうですが」
「ふふ、可愛いわよね」
犬は目を細めた。
「さすが魔法使いの子供。二人共筋がいいね」
「そうかも」
母の顔で犬はおどけた。
「あ。一休に頼み事していい?」
「良いわよ」
雨はまだ止みそうになかった。