魔法使い、旅に出る
6
山道を行けども行けども相手は見えず。
ここじゃー! と当たりをつけた一つ、蔵王で一行はアイスドラゴンの探索に躓いていた。
ちなみにHP50のかぴー、特製レモネードキャンディをガリガリ噛み砕きながらの登山である。
「おかしいねー? 居た形跡はあるのに」
薄くではあるがドラゴンの気配はまだある。
「何かあったのかしら」
犬も訝しげに眉を顰める。
そういえば近頃、阿呆な輩が居るとか居ないとかと言う話があったような、こんなことならちゃんと聞いておくんだったとちょっぴりかぴーは後悔した。
その時はまさかドラゴンを探す羽目になろうとは思っていなかったのだから仕方ないといえば仕方ないのだが。
「サクちゃん、どうなってんの?」
『さぁ?』
キリキリ歩け、とサクッヤー姫神はかぴーの髪を引っ張る。
痛い痛いとわめくかぴーを見て一休とさよはくすくす笑う。
「イタイイタイだって」
「引っ張ったら痛いよね」
「そんなことしたらだめなのにね」
「ねー」
二人は顔を見合わせてきゃっきゃっと言う。
「子供に言われてるよ?」
『いいの』
ふん! と踏ん反り返る。
あぁ、この人こういう人だったわー、と遠くを見つめたかぴーの目の端にキラリと何かが光った。
「あれ…?」
光ったところに目を向けるがなにもなかった。
「なんだ??」
「どーしたー?」
問いかける声に、いや気のせいらしいと答えてみるが何かが引っかかる。
なんっか見覚えのある感じなのだが思い出せない。
「どこでみたっけな?」
首を傾げるかぴー。
『なぁに?』
「どうしたの、かぴちゃん?」
サクッヤー姫神と犬は不審顔でかぴーを見た。
「あっちでキラッて光ったんだけどさー。なんかに似てた気がすんだよねー」
なんだっけかなー??
うーんうーんとかぴーは記憶を辿る。
「あっち??」
かぴーの指す方向に一同顔を向ける。
真っ青な空と初秋の緑が美しい山しか見えない。
その時、ふわっと風が吹きやはり何かがキラリと光った。
「ほんとだー……あ?」
「ね」
「蜘蛛の糸だぁ」
「蜘蛛なのー?」
『……』
無邪気な一休とは裏腹にサクッヤー姫神は嫌そうな顔をした。
『かぴ、戻ろう』
硬い声で姫神は呟いた。
一休に見えてさよに見えない。
そして姫神が戻れという。
それが何を物語っているのか大人二人は察すると子供をそれぞれ抱え一目散に下山した。
☆
山を下りた一行。
努めて明るくかぴーは言った。
「さー、次だ!」
もういっそホキャイドに飛ぼうぜ、と。
「そーだねー。本州には居る気がしないよ。蝦夷富士行くか」
それか湖か。
まぁどっちも飛べば近いよね。
地図を見て犬はそう答えた。