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おもかぴえろ
おもかぴえろ
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魔法使い、旅に出る

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 なんでこんなことになったんだっけ??

 と、北の大地を眼下に一休は思った。

 お山に登ってなんでか急いで下りて、えーと、おかーさんとかぴちゃんがホキャイドいこうぜって言って、ぶーんって飛んで。
 あのぶーんってやつ、すごいよねー。
 いきなり居る場所が変わるんだもの。
 ああ言うのできたら、どこにでも行けて便利だよねー。
 僕もできるようになりたいなぁ。
 …………ところで、僕、なんで木の上にいるんだろう。
 あ、きれいな鳥さんだ。
 大きいなぁ。

 小高い山にある大木の天辺で呑気にそんな事を彼は考えていた。




「……あんれー???」

 ワープで飛んだ先はなぜか木の上だった。
 ビバ、方向音痴。

『あんれーじゃないとおもうの』

 ふよよよと浮きながらサクッヤー姫神は言った。

『どうするの? みんな木の上よ』
「見晴らしよくていいじゃない?」
『アンタ、馬鹿じゃないの?』

 睥睨と言う言葉はきっとこう言う事さすんじゃないか? とかぴーは思った。

「まあ、どうするって言われてもねえ。下りるしか無いんじゃないの?」

 めんどくさいけどねー。
 あんたは浮いてるからいいわよねー。
 今日が晴れで良かったわよねー。

 心の中でぶつくさ言いながらかぴーは冗談交じりに言った。

「見よ! 火焔の魔女の技を!!」

 指パッチン。
 大気が歪み陽炎の鳳がそこに現れる。

『おおー』

 ぱちぱちと拍手をする姫神。

「褒めてもいいわよ☆」
『……』

 お茶目に褒めろと催促するかぴーに姫神は呆れた視線を送ったのだった。



 一休を除く全員を乗せた陽炎の鳳は優雅にホキャイドの空を飛ぶ。

「……ねえ、かぴちゃん?」
「ハイ」
「今回のはあまり笑えないわ、ハハハ」
「ソウデスネ、スミマセン」

 一休はどういうわけか一際高い木の上に飛ばされていた。
 彼が呑気に見上げていた鳥は陽炎の鳳だった。

「おかーさん、いたよー!」
「うん、いたねー」

 さてはて。
 実は小心者の息子。
 ゆらゆら揺らめく陽炎にびびりゃしないか母はひそかに悩むのだった。
 そして陽炎の鳳が一休を背に乗せるまで犬が案じるように少々時間が掛かり、それでも夕暮れまでには無事全員北の大地を踏みしめた。



 鱗も抜け殻もないけど、宿を取るついでにこまきの所に顔を出して行こう、と一行はこまきの店の前で溜息を吐いた。
 なぜならデカデカと扉に

「昼寝してるから、用があるなら力の限りブザーを押すのよ!」

 張り紙があったのである。

「自由だ……。自由すぎるよ……」

 ぼそりと犬は呟いた。

「それが自由業のいい所なんじゃない」

 けだるげな女の声に顔を上げると可愛らしい顔立ちの女がいた。
 彼女は店の扉を開くと言った。

「いらっしゃい、ご一行さん。ようこそ、こまきやへ」



 店内には厳つい防具やら剣やら斧やらから繊細なつくりの補助器具までありとあらゆる魔法具が置かれていた。
 見てる分には楽しくて仕方ない場所である。

「で? もってきた?」

 かぴーとは知らない仲ではないのだろうが、それにしても随分な口を聞く店主だな、と犬はこまきを見た。

「ねー。つか、ヤバい感じ」

 そして客のかぴーも。

「あーね。やっぱね」
「ナニソレ、知ってたなら言えよなー」
「いやー、あたしも最近知ったんだわ」
「はー???」

 こまきによると、今年に入ってからドラゴンの密猟が増えてるとのこと。
 そのためドラゴンたちとの友好的な付き合いは望めなってきていること、移住している種もあり、住処が判らなくなってきてもいる事などなど。

「なるほどねえ」
「ホキャイドはどうなの? 本州はわりかし人が入ってる気配がするけど」

 天井を見上げたかぴーとこまきに問う犬。
 犬は、お粗末にお粗末を重ねてエライ事になっていた蔵王を思い出していた。
 あれでは何人かはこの世から消えているのではなかろうか、そして地雷の様に残ってすらいるのではないか、と。

「ここら辺ももうすぐ羽化の時期だから。馬鹿共が沸いて出てくるんじゃないかしら」

 少し首をかしげてこまきは続けた。

「馬鹿共を捕らえたら、アンタ御役御免できるんじゃなぁい?」

 それでお役御免なら喜んでするさ、とかぴーは毒吐いた。

 ジャポニカ国内において魔法使いには色々煩雑な事情があり、義務がある。
 そのひとつが公共機関への協力。
 犬なら医療機関への協力、かぴーなら治安部隊への協力といった様にグレードや能力によって課せられている。
 実際のところは面倒事、厄介事はほぼ魔法使いに回ってきていて、丸投げされるならまだしもお目付け役が付いてあれこれ口を出してきて、面倒臭い事この上ないのだ。

「ま、また明日顔出しなさいよ。そうね、昼過ぎ」

 情報が入るかも知れないわ? とこまきは言った。