女は今が幸せなら、昔の古傷は痛まない~鬼平犯科帳などなど。
その男は小平次といって、殺し屋でした。
もちろん、妾を殺して逃げるところだった。
おみよは一瞬、雷光に照らし出された男の顔を見てしまい、
小平次もまた見られたことを自覚した。
その日から、おみよは小平次に狙われることになります。
プロの刺客が殺害現場を見られたのだから、おみよは口封じら殺されるしかない。
しかし、おみよはお上から取り調べを受けても、下手人の顔は見ていないと
頑なに言い張りました。
おみよが自分の顔を見てないのら、何もみすみす殺す必要はないのではと
迷いが生じた小平次に危うさを憶えた元締めは今度は彼を始末するようにと
他の刺客に言いつけた。
情けがかえって生命取りになる闇の世界の残酷な掟が
小平次の前に立ちはだかります。
そんなある日、小平次とおみよが偶然、再会。
顔色を変えたおみよを見て、彼はやはり、おみよが自分を知っていると悟りました。
見られていたからには、このまま生かしてはおけない。
小平次は心を鬼にして、おみよを殺害した-はずだった。
だが、彼が殺したのはおみよではなく、おみよの新しい奉公先の女中仲間だった。
年格好が似ていたので、間違えて殺してしまったのです。
おみよはこれで、小平次を庇うのは止めました。
この人が殺したんです。
と、ついに平蔵たちの前ではっきりと真実を告げました。
何故、おみよが小平次を庇っていたのか?
おみよは言いました。
私はおかみさん(妾)を憎んでいました。
この人は私がやりたかったことを私に代わってやってくれたんです。
つまり、小平次が殺さなければ、自分がいつか殺していたかもしれないと
言っているのです。
しかし、彼はおみよの大切な友達を殺した、だから、もう庇う必要はないと
言います。
殺された娘も捨て子で、鬼子母神にお参りして実の両親に逢うという願いを
聞き届けて貰うのだと話していたのに。
我が子を捨てた親が捨てた我が子に再会して歓ぶかどうか?
極めて疑問ですが、捨てられた娘はただ逢いたいと一途に願っている。
その願いも果たせずに無残に身代わりになった別の娘の運命にも
涙を誘われます。
この話はどこかにオチがあるというわけではありません。
ただただ、人の運命の哀しさを描いているのてはないかと思います。
親に捨てられた少女の悲哀、元は旗本でありながら、事情か゛あって殺し屋に
身を落とした男の罪深さ、身代わりになって殺された少女の儚いさだめ。
すべてが回り回っての宿命としか言いようがなく、
それがまた何とも残酷すぎるほどの繋がりというか運命なのです。
それを淡々と描くドラマの向こうに、平蔵の彼等を見つめる慈しみの視線と
やりきれない思いが透けて見える。
繰り返しになりますが、本当に何も大きな事件が起きるわけでもなく
大どんでん返しがあるわけでもない。
男と女の悲恋も情愛もないのに、見ていると心を絞られるような切ない気持ちに
なります。
見終わった後、人の運命とは、生きるとは?
と人生に対して何か疑問を抱かずにはいられないのですが、
この話だけで、応えを出すのは難しいでしょう。
目下は週に一度の割合で、借りてきて見ているシリーズですが、
特に順番は決めていません。
見たいものから見ています。
人生とは、生きることとは
このシリーズすべてを見終わった時、おのずとその答えが出るかもしれません。
☆ 男と女、夫婦とは? ~むかしの男より 2014/03/22 ☆
皆様、おはようございます。
相変わらず、冷え込みが厳しいですね。
今日の当地の気温は11度でした。
さて、昨夜は時代劇の鬼平犯科帳を見ました。
二つのお話の中、どちらも捨てがたいのですが、今回は平蔵と妻久榮の
夫婦の心模様を描いたお話ということで、大変珍しいので、
後半のむかしの男についての感想を書きます。
【画像あり】
☆ たいへんお美しい久榮さん。若い頃の多岐川由美さん ☆
平蔵が捕り物のために、しばらく江戸を留守にすることになりました。
妻久榮は留守居を預かります。
ところが、そこに砂吉という極悪人の盗人が囚われてきた。
平蔵が帰ってきて砂吉の尋問をしたら、必ず口を割るだろうと、
仲間たちは何とか平蔵が帰る前に、砂吉を救いだそうとする。
一味の用心棒に元はれきとした旗本の唯四郎という侍がいた。
この唯四郎が今回はキーマンです。
実はこの男、平蔵の妻久榮の最初の男だった。
つまり、久榮は平蔵と結婚する前、唯四郎という男と関係があった。
唯四郎は久榮に近付き、囚われている砂吉を逃してくれと頼む。
当然ながら、久榮は断固として拒否。
唯四郎は言うことをきかなければ、平蔵に自分と久榮の昔の関係を暴露すると
脅す。
久榮は毅然としてはねつけたけど、心は激しく揺れ動いた。
唯四郎は卑怯にも平蔵の妹の子、つまり姪をさらって、姪の生命とともに
久榮に言うことをきかせようとした。
久榮は流石は平蔵の妻、従順に従うと見せかけ、見事に姪を取り返し、
唯四郎や盗人一味を捕らえるように仕向けます。
囚われの身とになった唯四郎に戻ってきた平蔵が面会しました。
唯四郎が何を言うかと久榮は気になって仕方ない。
ひそかに二人が話をしている蔵に近付いていくと、話し声が聞こえた。
思わず身を強ばらせる久榮。
唯四郎がついに久榮との関係をバラした。
しかし、平蔵は少しも動じませんでした。
そんなことは知っていたさ。唯四郎よ、
女には心底惚れなきゃ、その本当の良さは判らない。
久榮を本当の女にしたのはこの俺だよ。
それを知っているのは久榮と俺だけだけだが、世の中、
男と女ってえものは本当はそんなものらしいぜ
いつもながら、平蔵の心にダイレクトに滲みてくる一言にハッとさせられます。
このドラマを見始めたときから、私は時間がかかっても少しずつ全巻
制覇すると決めています。
以前にも言ったように、すべてを見終えたとき、
人生とは何か? 生きることとは何か? という私の疑問に
一つの応えが出るような気がします。
そして、今回、新たに
男と女とは?という人生のもう一つの命題にも何かしらの
応えを見いだせるような気がしました。
生きることと、男と女の関わりという二つの問題は、私はどこかで
つながっている-切り離せない問題だと思います。
もしかしたら、このドラマがその応えをくれるきっかになるかもしれないですね。
番組のラスト、
この後、平蔵は久榮の前で近藤唯四郎の名前を出すことなく、
久榮もまた二度と近藤のことを思い出すこともなかった。
ナレーションが入り、テーマ音楽のインスピレイションに変わります。
作品名:女は今が幸せなら、昔の古傷は痛まない~鬼平犯科帳などなど。 作家名:東 めぐみ