小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

アインシュタイン・ハイツ 103号室

INDEX|5ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

最強は誰かinコンビニ


わいわいがやがや愉快なコンビニ 御用の際には何でもござれ

というわけで、学校が引けたら、バイトである。
「ちわー…って、あれ?藤田さん、だけですか?」
比較的忙しいはずの夕方。だが店内には新しく入ったバイトの女の子、藤田奈桜がレジにぽつんといるだけだったので、伊織はあれ?と首を傾げた。
「あ、志摩さん、こんにちは。いや、居るには居るんですけど……」
伊織に挨拶を返しつつ、奈桜が困ったようにバックヤードのほうを見やる。
「あの、店長と、山井さんが。」
若干引きつった表情で言われた名前に、伊織は何が起きているのか理解して思わずため息をついた。
あーあ。
「言い合いしてるんでしょ、また。」
「そ、そうなんです!店長が山井さんを呼び出して。」
伊織が苦笑気味にバックヤードの方を示すと、奈桜はコクコクと頷いた後、ふと目を瞬いた。
「え?”また”?」
「そ。いつもの事だから。アレ。」
店長と山井さんとの仲は、まさに”水と油”だ。
一般的合理主義で繊細常識人種な店長と、特殊合理主義で非常識新人種の”おばちゃん”である山井さん。そんな二人の相性が良いわけはなく、事あるごとに店長は山井さんを呼び出してはこうして注意?を行っているのだ。そしていつも大激論が始まる。
「まあ、勝率九割、ってとこかな。」
伊織の言葉に、奈桜が心配そうに眉をひそめた。
「そんな…大丈夫なのかな……山井さん。」
「え?」
きょとん、と奈桜の言葉に首を傾げる伊織。伊織の反応に更にきょとん、と首を傾げる奈桜。
「え?」
「勝率九割、ですよ?」
「勝率九割、なんですよね?」
噛み合わない。
きょととん、と再び今度は二人揃って首を傾げたところで、折り悪く団体さんが入店してきた。ガタイの良い坊主頭の制服姿は、野球部で青春する少年の証だ。
「藤田さん、ごめん、すぐ戻るので!」
成長期真っ盛りの男子高校生の団体さんは田んぼを荒らすイナゴくらい強敵だ。とても一人で捌ける相手ではない。
一方、レジに入りたくともうっかり伊織は普段着のままだ。
男子高校生諸君ががやがやとコンビニ内を物色している間に、伊織は慌ててバックヤードの方に走った。


□■□


『ですから、そういうのは困るという話をしているんです!』
『だからなんで困るんですか!』
『なんでも何も、同じ話をよそのコンビニで聞いたことがありますか!?』
『聞いたことがないからどうだっていうんですよ!』
――うーわ、今日も激しい事で……
ロッカーに荷物をおいて、ユニフォームを引っつかみ、ネームホルダーを首に掛ける。
その間にも、隣の休憩室から、二人の争う声が微かに洩れ聞こえてくる。
『大体ですね、店内に動物が入るなんて、前代未聞ですよ!』
『ミドリさんの猫ちゃんが、じゃあ何か粗相でもしましたか!?』
『ですから!!!!!!』
――え?なに今日の議題はアイスなの?
気になるんですけど。聞きたいんですけど。というか最早、俺も混ざりたいんですけど。
だが、店の方では、奈桜が男子高校生を相手に戦っている。ぼやぼやしている暇はない。
「店長、山井さん、今から店忙しくなりますから!早く終わらせてください!」
聞こえるか聞こえないか分からないが一応そう声を掛けて伊織は店の方へ戻ったのであった。