現想怪路 第一話「伝心交錯」
三
「遅刻した理由を教えてくれる?私を一時間も待たせるなんて、相当大事な用事だったんでしょ?」
待ち合わせ場所である、僕らの通っている私立七咲高校の校門の前で、由理香は不機嫌そうな顔でこっちを睨んでいる。
僕が校門に到着したのは9時54分。
学生らしく5分前にしっかり集合しているはずなのになぜか僕は由理香から責められている。
「なぁ由理香。おかしくないか?10時に校門前に集合って言ったのはそっちじゃねーか。僕は言われた通りに集合してるんだから何も悪くないぞ。」
「何寝ぼけたこと言ってるの。朝起きてすぐだから頭働いてないんじゃない?」
何か会話が噛み合わない。
「いや何も寝ぼけてないぜ?今日はいつもより早く起きたんだ。朝飯を食べたのも8時45分くらいだったし・・・。」
「なら9時くらい間に合うでしょうがっ!」
「9時?」
「そうよ。ちゃんと今朝送ったじゃない。校門前に9時に集合、って。」
「いやだから、集合時間は10時だったよ?由理香の送り間違いじゃない?」
「絶対そんなことないわ・・・ほら!」
由理香は自分のスマートフォンの画面を見せてきた。
そこには確かに僕宛に「9時に校門前に来ること!」と送ってある。
「そうだったか・・・・?俺の見間違いか・・・。」
スマートフォンを取り出し、由理香からの連絡をもう一度見てみる。
そこにはさっき由理香が見せてくれた通りのことが送られてあった。
「・・・本当にすまん。」
「じゃあ今日の昼ご飯は真の奢りね。」
「・・・仕方ないか。」
朝から嫌な目にあった。
でもあの時僕は「10時」の文字を見た。
・・・やっぱり勘違いだったのだろうか。
でもまだその時、僕はそのことを運が悪かった程度にしか考えていなかったのだ。
作品名:現想怪路 第一話「伝心交錯」 作家名:或宮とりえ