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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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どうってことないさ・・ (3)

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夫婦は、慌てた。

「今回は、何だか嫌だ。・・行きたくない・・」

だが、知人に頼まれ、
仕方なく出掛けた彼。

元凶をつきとめ、
目には目をの手段を用いた。

首尾よく夫婦の土地は手に入れたが、

数年分の儲けをふいにされた者たちは、腹の虫が治まらない。

彼が、一人になった一瞬の隙を狙って、
三人の暴漢が襲って来た。

「こいつ、凄いぞ・・」

その町で知らぬ者はいない、その道で生きる大男が言う。
骨折してからも、一人投げ飛ばし、
他の攻撃も何とか防いだと・・
(どこが凄いんだ・・)

「まあ、後は、俺が痛めつけておいた。」
(自慢になるか!)

優男は、家具屋の御曹司。
この国で超有名な、
ホテルの内装を全て賄っている。

大男も、優男も、
彼の無二の親友らしい。

どういう取り合わせだ・・

「生きざまの問題さ。」

貧しいとか、富んでいるとか、
善人悪人だとか、
そんなの関係ない。

「俺たちは、こいつの馬鹿なほど、まっしぐらな処に惚れたんだ。」

大男も、ベッドに横たわる彼を見ながら、頷いた。






   愛  繋がり


いかれ野郎の怪我以来、
この小さな通りは、高級車の駐車場も兼ねた。

飲み屋のおっさんも、
プロダクションのオーナーも、飛んで来た。

そして、二人とも、ニヤニヤ笑いながら・・

「良かったな、これでこのアホと、暫く一緒に居れるぞ。」
と、
彼のパートナーをからかう。

下を向いて、まんざらでもなさそうな彼女・・

滅多に来ない客を持て成す為に、
近所のおかみさんや従妹と一緒に、
主人とおかみさんは、大忙しだ。

「何だい、あの大男は・・?」

酒の量が半端ない。

大声で話し、笑い、食べて飲む。
そして、

「俺たちの中で、こいつが群を抜いて貧乏だ。まあ、バカだから・・」

仕方ないかと、
声を揃えてみんなが笑う。

笑われている、バカまで一緒に笑っている。

六月、新しい学期が始まる頃、
いかれ野郎は、動ける様になった。

毎日の散歩。
市場を回りながら、一軒一軒冷やかして歩く。

そして、

必ず、彼を支えながら歩くパートナー・・

何だか近寄れない・・

この二人の醸し出す、一種独特の雰囲気は、
とても言葉じゃ言い表せない・・

俺は、五メートルも十メートルも離れて、
二人の後ろを付いて行く。

そして、

僅かばかりの買い物を終え、
家に帰ると、
二人並んでソファーに座る。

家族は、
そんな二人をからかう様に目の前を通り過ぎる。

そんなに大きくもない家なのに、
二人の為に、
一番大きな部屋を譲っている。

俺は、行き場が無くて、
何時も小さな庭から、
窓越しに二人を眺める。

「あのね、Shalom がね・・・」
「そうかい・・」

「それでね、わたしはね・・・」
「そうかい・・」

静かに話す、
二人の声は聞こえないが、
どうせ話題は、彼等の子Shalom の話さ・・

そんな時、
俺は、太っちょ神父やチャイリンの面影を追う。

決して大した事など出来ないが、
クリスマスには、
少しだけの気持ちを送った。

俺の事、覚えているかい・・

何時かまた、
恩返し出来る日もくるだろう・・

こんな騒がしい毎日だから、
何時も懐かしいなんて思っていられない。

でも・・・

「夕御飯だよ!」
(・・な?。・・こんなんだから・・・)

俺は、軽く声に向かって手を挙げて、

まだソファーでデレデレしている二人に向かって、

これまでに最高のブイ・サインを送ってやった。






   再会 そして・・


チャイナ・タウンのゲートを潜り抜け、少し進む。

徐々に雑然とし始める街。
人も何だか忙しなく、
クラクションなど気にしないで、荷車を押す。

「何時もこうなんだから・・」

この通りに入ってからは、
歩く方が速い。

その通りを抜けて、
緩やかにカーブした道を更に進む。

両端に並ぶ出店の所為で、
道の幅は、四分の一になっている。

Divisoria
パッチもん、バッタもんを売る店は延々と、
どの通りにも並び、

売り子たちは、売る気が有るのか無いのか・・

午後二時過ぎ、
あんた達、今、其処で食べているのは、
昼食かい・・、それとも、スナックかい・・?

おい、せめて椅子に腰かけろよ。

段ボールなんか敷いて、
路上に寝てる場合じゃないだろ・・

人ごみを掻き分けながら進み、
流れる汗を拭きながら、
ふと、感じる視線。

俺は、立ち止まった。

「・・・・・・」

向こうも、まさか・・こんな処で・・
とでも思ったのか、

「暫くね・・」

表情を和らげるまでに、かなりの時間をかけて、
彼女が、静かに言った。

そして、ゆっくりと、
俺の前に来る。

ほんの僅かの間、
俺も彼女も、周りのものなど見えなくなった。

他人の目など気にせずに、
俺たちは、抱き合った。
無言で、強く・・

「お店があるから・・」

「いいさ、放っとけ・・」

彼女は頷いて、
俺たちは、向こうの通りの小さなレストランへ・・

レストランって云ったって、
場末の、
ガサツな奴等ばかり・・

大声で商売の話をする。
こんな時間なのに、酔っ払って死んだような奴・・
でも、

いいさ、俺たちには関係ない。

おっさんの店で、
働き始めてひと月余りの事。

既に古株になっていた彼女は、
一人の男に襲われた。

アルコール中毒の旦那から逃れ、
やっと希望を持ち始めたというのに、

また探し当てられて・・

俺は、彼女を庇いながら、
彼女の旦那だから、
手出しはしなかった。

警官が来るまで、
道端に転んだ彼女の上で・・
されるが侭に、じっとしていた。

それから、

二人は、急速に接近した。

お互いの身の上を話した。
そして、
お互い涙を流した・・こんなにも、
涙って、次から次へと出るんだな・・

俺は、
この国で初めて、
体の芯から好きだと、愛おしく思って彼女を抱いた。

だが、

ある日、

俺に何にも言わないで、
彼女は消えた。

「わたしは、彼の本当の相手じゃないから・・」

そう言って、
黙って出て行ったと、おっさんが話した。

人生、そんなに長く生きてはいないが、
時として、

神さんも粋な計らいをするものだ。

その夜、
二人は、安宿に泊まった。

朝までが短かった。

二人とも、
離れていた二年近くを知って貰いたくて・・
我を忘れて話し続け、

ふと気付いて、
残り短い時間を相手に譲る、照れ笑いと共に・・

「会えて良かった・・。わたし・・・」

故郷の田舎へ帰るんだと告げた顔は、
とても、
晴れやかに見えた。






   弾ける  恥じ入る・・


この国には、それぞれに土地の神様がいらっしゃる。

ハイウェイの近くの、この場所は、
確か、
セント・ ・・・忘れてしまったが、

兎に角、有り難い。

家の前の通りを、
まっすぐ進めば教会が在る。

その向かいの広い空地。

何時もは、
ジプニーの駐車場。
そして、バスケット・ボールやテニス・コートとして使う。
だが、

来るべき守護神に、感謝の気持ちを捧げる為に、

この数日は、