小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

和尚さんの法話 「因果応報」

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

夫は毒蛇を破り身体腫れ爛(ただ)れ、我之を見て悶絶(もんぜつ)す。」
そして、朝になって、見てみると、夫が蛇に食われて死んでるわけです。
自分はそれを見て気絶してしまうんです。

「我は大児の手を引き、小児を抱いて道を往く。
道半ばに大河有り、即ち大児を留め小児を抱きて彼岸に至りて置く。」
産まれた子供を抱いて、大児の手を引いて、故郷へ帰るんですが、途中に大きな河があって、大児をそこへ置き、小児を先に川向こうへ置いて戻ってくるから待ってなさいよと、言うわけです。
そして小児を抱いて、河の浅い所を知ってますから、いつも故郷へ帰るときに渡る川ですからね。
そして歩いて向こうへ渡っていくんです。
お産のあとやし、二人いっぺんに連れて河を渡れませんから。
そして小児を先に向こうへ渡って置いてくるわけです。

「還りて大児を迎う。 児遥かに我を見て来たり水に入りて水乃ち大児を流し去る。
我之を追いて救う事能わず。」
小児を抱いて向こうへ渡ったお母さんを待っていた大児は、一人で待たされていたので、淋しくて仕方が無かったんですね。
母親が迎えに戻ってきた姿が見えると、おかあちゃーん、と嬉しくなって河へ入ってきました。
お母さんは故郷へ帰るときに、いつもこの河を渡っているので深いところと浅いところを知っていますけど、子供はそれを知りませんから、入ってきたんですね。
母親はそれを見て、入ってきたらあかん、と言うけれども、あっという間に大児は河に流されて、溺れて死んでしまったのです。
それを見て、母親はとても助けることが出来なかったんです。見過ごすしかなかったわけです。

「我時に帰りて小児を見るに狼之を食い去る。」
大児を見殺しにしてしまった自分は、仕方無しに、小児を置いた岸に戻ってみますと、小児は狼に食べられていたのです。

「我亦断絶す。 やゝ久しくて蘇り亦道を行くに一人の梵志に逢う、此の梵志は父の親友なり。」
それで気絶してしまうんですね。
そして一人の梵志に会うんですが、その梵志は自分の父の親友の梵志だったわけです。

「梵志に問うて曰く 「我が父母平安なりや」 と。」
其の梵志に、私のお父さんやお母さんは元気にしていますかと聞いたんですね。

「梵志答えて曰く 「汝の家失火し皆死す。 此の事を知らせんとして御身の家に行く所なり」 と。
我是を聞きて悶絶す。」
あなたの家は、失火して家の人は皆死んでしまったんですよ、と。
このことを知らせようと、あなたの家へ行くところだったんです。
この知らせを聞いて、また気絶してしまうんです。

「梵志我を憐(あわれ)みて將(ひき)いて家に帰る。」
そこでお父さんの友人は、可哀相に思って自分の家へ連れて帰るんですね。

「後縁有りて梵志我を他にとつがしむ、我亦妊娠す。」
まだ若いし、一人でいるのもなんだからというので、縁談を紹介してくれて、或る男の人と結婚をしたんです。

「我時に産を欲する時夫外より帰る。 門を打ち大いに叫ぶ、戸を開く者無し。 夫怒り、入りて我が生みし子を殺し、酥(そ)を以て之を煮る。」
そしてまた妊娠をして、出産をするときに、外出していた夫が帰ってきたんですね。
ところが、この主人というのは暴れ者でしたので、出産の最中に家に入れると何をするかわからないというので、産婆さんも戸を開けなかったんです。
怒った夫は、戸をけり破って入ってきて、産まれたばかりの子を煮て、殺してしまうんです。

「我、心中に思うよう、 「福尽きて乃ち此の人に会う」 と。」
自分はもう福が尽きてしまったから、こういう目にあうんだと思って、家を出てしまうんですね。

「即ち家を捨て去る。 波羅奈に到り城外に在り樹下に座し息う。」
そして、波羅奈という所へ来て、木の下で休むんです。

「時に彼の国中に長者の子有り。 妻をうしない城内の園の中に於いて之を埋め其の妻を纞(こ)い慕う。」
長者の奥さんを埋葬してある墓があって、其の夫が参りに来ました。

「時に彼、我を見て問うて言く 「汝、若し独りならば、我が妻とならんや」 と。
乃ち夫妻となりて彼の家に入る。」
そして、自分を見て、あなたは一人なら私と結婚をしませんかと話しかけてきました。
はい、いいですよ、と承知して結婚をしました。

「時に夫病を得て忽ち没す。 
其の国の法、死者の愛せる者は共に塚に埋む、我夫と共に塚に埋まる。」
ところが、其の夫は病気にかかって死んでしまったんですね。
昔は、主人が死ぬと、妻も一緒に生きたまま埋めたんですね。
それが如何にも酷いというので、ハニワというのが出来て、奥さんの代わりに人形のような物を一緒に埋めたんですね。
ところが、この時代は奥さんをそのまま生き埋めにしたわけです。

「時に野盗来たりて塚を掘り、我が端正成るを見て出して妻とす。」
墓に埋めると、泥棒が墓を掘り出すんですね。
いい家のお墓にはいい物が入ってるということで、それを泥棒がとりに来るんです。
そして、その野盗が私を見て、私が綺麗だったから、連れて行って自分の妻にしてしまったんです。

「其の賊里をおそいて死す。」
いつも野盗は、里へ降りて家を襲ってたんですが、立派な家があって、その家には大勢用心棒を置いてたんですね。
いつ野盗が襲ってきてもいいように準備してあるわけです。
それで戦争になって、賊の大将が死んでしまうんです。

「我亦其の賊の王と共に塚に葬らる。」
盗賊の主が死んだので、私はまた盗賊の主と一緒に墓に埋められてしまいました。

「時に狼、狐、犬等塚をあばき我亦出づるを得たり。」
狼とか、犬が食べ物をあさりに、塚をあさりに来るんですね。
それで土を掘るもんだから土が緩んだので、其の隙に逃げ出したんです。

「我昔常に聞く、釈子の子、家を捨て道を学び道成って仏と成ると、往きて自ら帰すべしと」 と、乃ち仏に帰して今に至る。 ―――」
お釈迦様と言う方がいらっしゃって、そしてお悟りをお開きになって、仏様に成っているという。
私はこの世に何の夢も望みも無いから、この仏門に入って、お釈迦様のお弟子にして戴こうと、そういう気になるんです。
そして、私はそのお釈迦様の弟子になって今日に至ったんです。
と、新しい尼さん連中にこう語ったわけです。

「時に諸比丘尼、重ねて申す。 「先の世に何咎(とが)有りて此の災いを得たるや、唯願わくは之を説き給え」 と。」
また新しい尼さんたちが、こう聞いた。
あなたは前世でどんなことがあって、こんなめにあったんですか、それをお聞かせ下さい。と、訊ねるんですね。

「即ち途を行きて祇洹(ぎおん)に趣く。」
私は仏様に帰依しようと思って、祇園精舎へお釈迦様に会いに行くわけですね、ぼろぼろの着物を着て。

「遥かに如来を見奉る。」
歩いていると、お釈迦様と道で出会うんですね。

「其の時世尊我が度すべきを察し来りて我を迎え給う。」
お釈迦様は私を見て、此の者は助けてやらんならん者だ、救うてやらんならん人間だなということを神通力でちゃんとお見通しになって、そして私を迎えて下さった。