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 なぜ、こんな腹立たしい人生の結末に? そのプロローグは一年前の登山だった。
 すでに一線から退いた光司と愛華、そして大輝と優子、この二組の熟年夫婦は山頂を目指した。頂上までの道のりは厳しいものだった。それでもご来光は神々しく、心が洗われた。

 だが下山途中、台風の接近か山が荒れた。冷たい雨が疲れた身体に容赦なく襲いかかってきた。視界は失われ、深い沢に迷い込んでしまった。その挙げ句、優子が足を滑らせ捻挫し、前へと進めない。四人は岩陰に身を潜め、救助を待つこととした。
「私が足を傷め、遭難してしまったのね。ゴメンなさい」
 優子の冷えた頬に落涙の線が二つ。

「優子さんのせいじゃないですよ。ここで待ってれば、きっと救助隊が発見してくれます」
 光司は自分自身を鼓舞するためにも言葉に力を込めた。しかし、友人の大輝は「ここで待っていても死はあるし、待たずに下山しても危ない。まさに生死はフィフティフィフティだよ」と恐怖心を煽る。これに愛華が血の気が引いた顔を上げる。
「それじゃ、待つ、待たないのリスク分散をしない?」

 光司には妻が何を言おうとしているのか理解できない。それでも愛華は微かな笑みを浮かべ、「あなたと優子さんはここで待って、私と大輝さんは──今から下山するから」と。

 光司は驚いた。されど確かに、愛華が言う通りかも知れない。今の運命は生と死が半々。つまり、この暗い岩陰でただ待っていても、全員の死はあり得ることだ。
「夫婦内でも、どちらかが生き残る、そのチャンスを増やすってことか。そうしよう」
 横の大輝が言い切った。これは一つの賭け、されど光司と愛華の今生の別れになるかも知れない。そして大輝の夫婦も同じこと。

 だが大輝の同意に煽られたのか、光司も優子も頷いてしまった。