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海竜王の宮 深雪  虐殺8

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 で、そんなこと言ってる方が、西王母で謡池の最高位だ。表向きには、そういうことだが、ここにいるのは正体を熟知しているものばかりだ。そんな冗談はいらんわ、と、静晰あたりは内心でツッコミは返している。もちろん、想像上は裏拳付きだ。
「静晰様、クスリの調合する機材を一式、貸してもらえますか? 材料は確保しておるのですが、機材までは手がまわりませんでな。」
「承知いたしました。近くの部屋に用意させます。どうぞ、一休みしてくださいませ、東王父様。」
「これこれ、静晰、わしは、ただの薬師じゃ。東王父ではない。」
「私くしも、ただの乳母ですからね、静晰。」
 いや、だから、表向きは、それで対応するって言ってんだよっっ、と、再度、内心でツッコミはするが、手配に走り去る。
「簾は保ちませんでしたか? 上元。」
「いえ、静晰が痺れを切らし叩きのめして謡池へ移送させました。・・・しばらくは静養させないと、朱雀の力が弱っているそうです。」
「おやまあ、ほほほほ・・・・さすが、静晰だわ。」
 爆発したら、とんでもない静晰の性格は、西王母もよく知っている。ギリギリまで滞在させずに、謡池へやってくれたのなら、回復は早いだろう。
 二人も、じっと湯殿に沈んでいる小竜を観察する。左目の傷は、目を閉じていて判らないものの、再生している様子はない。
「解毒は? 」
「あれから十日。できていると思われます。ただ、その判断が私くしにはできませんでした。薬師様、どうぞ診断をお願いいたします。」
「承知いたしました。とりあえず、沈めておけばよろしい。クスリを調合せねば、次の段階には進めません。」
「上元、後は私くしたちがやりますので、引き取ってください。」
「わかりました。・・・・では、これにて失礼いたします。」
 この二人が担当するとなると、上元も滞在はできないから、挨拶して部屋を出る。神仙界広しといえど、最高の薬師と最高の乳母だ。これで小竜の怪我も治療できるはずだ。
「深雪の顔色が悪いね? 」
「そうですね。叔卿を助けるのに全力を使ったのでしょう。・・・目が覚めたら誉めてやらねばなりませんね。」
「やれやれ、とんだ、やんちゃさんだ。じいじは、心配だ。」
「ばあばも心配です。とりあえす、薬湯の準備からですか? 」
「そうだね。少し手伝ってくださるかな? あなた様。」
「もちろんでございます。・・・薬湯ができたら引き上げて寝台へ移しましょう。」
 解毒さえできれば、霊水に沈めておく必要はない。後は患部に直接、クスリを塗りこみ、薬湯を飲ませることになる。左目の再生を促すクスリは、調合にも手間がかかる。まず、簡単なほうの薬湯から準備することにした。



 別室で、薬師と乳母が薬湯を作り終えた段階で、小竜は元の部屋に戻された。まったく意識がないから、苦かろうがまずかろうが口にさせても反応はない。
「とりあえず、それを徐々に飲ませてください。再生のクスリを用意します。」
「お手伝いはいりませんか? あなた様。」
「はははは・・・粗方の準備は、あなた様も手伝ってくださった。ここからは調合ですから、お手は必要ではありません。小竜のほうを看てやってください。」
 左目を再生させるには、そのままでも可能だが、再生を早めるクスリというものがある。薬師は、その知識があるから作れる。それを左目のあった部分に埋めて、周囲の細胞を活性化させる。かなり特殊な材料が必要で、普通にはできない代物だ。薬師の知識と、乳母の戦闘力があればこそ、調達できた材料だった。もちろん、調合についても知っているものは少ない。最高の薬師しか知らないだろう。
「では、深雪。ばぁばとねんねしていましょうね。・・・・うふふふ・・・たっぷりと栄養を摂らせて、ぷくぷくにしてあげますからね。」
 調合される薬を待つ間に、小竜には様々な栄養や必要なカロリーやらが混ぜ込まれている薬湯を与える。匙で少しずつ、喉にやるから時間がかかる。ある程度の量を飲み終えたら、霊水を沸かした湯に浸け、身体を洗う。意識がないから、おしめをしているので、一日に何度かは、そうやって身体を洗い清潔にしている。
 ここまでの看護は、天宮の主人でも無理だろう、というもので、静晰もコメカミに手をやっている。なんせ、女仙を統括する女神が、ご機嫌でおしめを洗っているのだ。在り得ないだろう。
「乳母様、そのようなことは私くしが。」
「いえいえ、これぐらいは楽なことですよ、静晰。それより、薬師殿のところに食事を運んでくださいな。あの方は、ひとつのことに没頭すると、他は失念されますのでね。」
 そう命じられて、薬師の元へ食事を運んだら、確かに、まったく反応がない。微量の配合をしているらしく、じっと匙と乳鉢の中を睨んでいる。

・・・・ずっと、このままなのかしら・・・・

 黙って見ていたが、こちらに気付くこともない。ずっと、作業を続けている。これでは、いつまでたっても埒が明かんと、静晰は空の匙を手にしている瞬間の薬師の腕を捕まえた。
「おや、静晰。」
「一端、それを置いて食事をなさってください、薬師様。・・・そうでないと、ここで私が剣舞を披露いたします。」
 貴重な薬材のある場所で剣舞なんぞ踊ったら、薬材がダメになる。これぐらいの脅しでないと、薬師も反応しない。
「それほど、時間が経ったかね? 」
「あれから二日は経っております。睡眠は強要いたしませんが、食事はしていただきます。」
「はいはい、では休むとしよう。小竜の様子を見て来よう。食事は、あちらでさせていただく。」
 スタスタと、そのまんま薬師様は出て行く。小竜バカも、ここまでくると立派だ。さらに、霊水を配達に、上元と九弦、青飛が入れ替わりにやってくる。早く意識を戻してくれるか、水晶宮の黄龍に来て頂かないと、この事態は収束しないだろう。
 



 簾が、ざっと見繕って三週間、と、予想していたが、事態は、それで収まらなかった。それというのも、シユウの王が身罷ったため、その後釜になるために派手な戦闘が起こされたからだ。もちろん、シユウ内部の話だが、どこでもバカはいるもので、もう一度、竜族のトップクラスを殺して戦績を稼ごうとする一団もある。それが、竜の領域に現れるから、こちらも警戒態勢が解けないままだ。
「全部、殲滅させてやりたい。」
 すぐに、どうにかなると思っていた華梨は水晶宮で、ギリギリしている。本拠地まで押し寄せられることはないが、さすがに守りの要である黄龍は、本拠地から離れられない。自分で出向けたら、即座に、バカなシユウの一団は殲滅できるのだが、戦陣に並ぶことは黄龍には認められない。待機するだけの時間は、イライラするものだ。
「華梨、落着け。・・・あちらには、乳母様と薬師様が滞在して、小竜の世話はしてくださっている。」
 静晰と、上元夫人から、その旨の書状が届いている。小竜のほうは、恙無く快方に向かっているので、心配無用とのことで、長も安堵していた。簾と蓮貴妃は、謡池で静養させているとも付け足されていたので、精神的には軽くなった。あのままだと儚くなると覚悟はしていたからだ。
「やはり、玉座は空になったようですね、兄上。・・・・しかし、この騒ぎは、いつ収まることか。」