即興小説まとめ(2)
2.終わりを待つ夢
このまま、この霧の中にすべて消えてしまえばいい。
白に沈み飲み込まれるのがこの世界の終わる景色であるならば。
それはなんと静かで穏やかで密やかな死であろう。
これは諦めではない。
私たちは、受け入れたのだ。
抵抗をやめたのではない。
覚悟を決めたのだ。
静かにざわめく心臓が心地好い。
生きている。
刺し傷だらけの弱ったこの心臓が。
刺された傷を大事に抱え、護り、寄り添いながら。
その瞬間を、ただ、待っている。
やがて霧は晴れるのだろう。
そして世界が終わるのだろう。
でも今は、まだ確かに、ここにあるのだ。
足の着く地が。
肺を満たす冷気が。
鼻につく重い布のにおいが。
このまま、この霧の中に、すべて消えてくれやしないだろうか。
どうせ跡形も無く消えるのならば、
破壊を介さず無へ帰したい。
白い霧に、沈み、飲み込まれるように。
静かに、
穏やかに、
密やかに。
作品名:即興小説まとめ(2) 作家名:真朱@博士の角砂糖