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カーテン

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奇怪な模様のカーテンとはいうものの、それはボクとキミが初めて一緒に選んだというだけのこと。このカーテンを見つけて言ったキミの言葉が発端だった気がする。ボクもそう思ったのかは、よく覚えていない。

「ありえなーい。でもこれがいい」
「これ!?」
「そう。想像の神が宿ってる」(なんだそれ?)
店で たたまれたそのカーテンを全体に広げることもなく、その一部をキミがどう見たのか…… 店主が、値引いてくれるというので買ってしまったけれど帰り道は重かった。
部屋の窓に広げられた時、「なかなかだにゃん」とキミは、笑った。なるほど、部屋にかけてみると案外似合う。

平織の布地にマーブリングで描かれたような柄。その上に 染め柄というよりも印刷に近い数色のステンド硝子のような図柄の色彩が丸く散らばり、かといって透けているわけでもない。
裾の方に描かれた柄も 絵画には遠く及ばず、おそらく一点ものじゃないかと思うけれど、誰かの悪戯書きを布においたような統一感のない絵柄だ。

洞穴の壁画のような…… ひとつ部屋があるような……
何より、いつまでもキミが楽しそうにカーテンを眺めていたから、良かったんだと思えた。 
数箇所、織糸を引っ掛けて糸が突っ張っているところは、キミが安全ピンで小物を吊るした跡だ。よくよく見ないとわからないし、その時の思い出のほうがよっぽど大事だった。

「そっかぁ。また違ったお部屋になるね」
「寂しい?」
キミは、返事をしかけて言葉をのんで、首を横に振った。
「じゃあ、出かけようか」
ボクと外へ出かけてから 忘れもの、とボクをドアの外に待たせ、キミは部屋の中に飛び込んでいった。どうしたのかな? トイレだったのかな? 出てきたキミは、バッグを直していた。鍵を閉めながら様子を覗ってみると、携帯電話を触っていた。
あのカーテンの掛かった部屋でも写してきたのかな。ボクは何も聞かず、鍵をポケットにしまった。
作品名:カーテン 作家名:甜茶