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カーテン

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キミと過ごすこの空間。
ずいぶん見慣れた部屋の風景はボクの何かを足止めているような気がする。
このままでいい。キミがいればいい。そんなどこか保守的な気持ちに気付くボクが居る。

どんどん先を目指し キミが歩み進んでいる背中を見てしまったのかな。
キミは弱い、小さいもの。ボクの囲いの中で笑っていてくれたら……。ボクの傘の中で凌いでいてくれたら……。キミが、ボクの背中の後ろにいる安堵感。ボクと向き合い見つめる幸福感。それは、ボクの独りよがりだったのかな。
キミの背中を見るなんて、思いもしていなかった。
ボクも変化を楽しんでみよう。そうしたらキミとの関係ももっと素敵に感じられるようになるかもしれない。

ボクは、食べ終えたプリンの器を片付けるキミに尋ねた。
「この部屋どう?」
「にゃん? 好き」
「あ、そう…… どう好き?」
キミが、首を傾げ、考えている。(おや?即答しなくなった)キミは、右の掌をボクの顔の前に真っ直ぐ立て 待って とばかりに器を持ってキッチンへと消えていった。
器を洗う水の音。姿は見えるものの、次の言葉が掛けられず、ボクは部屋を見回す。
水栓を止め、キミが卓袱台の、ボクの前に座った。
「居心地がいい」
「そっか」
参考になったのかどうか…… ボクは、キミの笑顔と同じように笑った。

「さてと」
ボクは、仕事の机の上の 書き上げた原稿用紙をしまいこんだ袋の封を閉じた。
今日中に担当者へ発送しなくてはならない。
「これを送りに行ったあと、少し付き合ってくれないかな?」
「いいよ。お買い物?」
ボクは、頷くと、横の窓に掛かっているキミと選んだ奇怪な模様のカーテンを揺らした。
「カーテンを変えてみようかと思うんだけど…(はっきりしろ!)変えるから選んで」
自分でも情けない言葉に尻つぼみに声が消えた。
「どうしたの?」
「気分転換ってとこかな」
やや日焼けはしたものの、さほど傷んではいないし、厭きてもいない。でも他に簡単に雰囲気が変わるものが、この部屋には見当たらなかったというだけだ。
作品名:カーテン 作家名:甜茶