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シナリオ『CUBE』第1幕「アウトサイド」

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シーン3



   舞台上には孝二が箱に寄りかかって手紙を読んでいる。

孝二 佳を振った時、僕は、それでいいと思ったんだ。孝二が佳のことを好きなのも知ってた。そして、僕はあの問題を解くために、様々なものを捨てなければならなかった。だから、あの選択は全然後悔してないんだ。そうして、僕はあの日からただ、自分の世界に引きこもって、あの問題を、ポアンカレの予想を解いたんだ。でも、時折、僕の胸を思い出がするどくえぐっていった。

   回想シーン。正路が部屋から出てきて机に座り、問題を解いていく。そこに佳が入ってくる。佳はうれしそうに、封筒を持ってくる。

佳  しょうちゃん! 
正路 やあ、こんにちは。
佳  ほら、これ(封筒を渡す。)
正路 (封筒を受け取り中身を見る)・・・おめでとう。
佳  もう、それだけ? 
正路 何かといわれてもね・・・。ま、佳なら受かるって信じてたから。
佳  ま、先生の自慢の教え子ですからね。当然ですよ。
正路 そうだね。
佳  そういえばさ、今なに解いてんの?
正路 今解いてるのはね、ポアンカレ予想だよ。
佳  ぽあんかれよそう?なにそれ?
正路 ううん、簡単にいうとこれを解くと宇宙の形が分かるんだ。
佳  へ?
正路 宇宙が有限だっていうのは、もう証明されてるんだけどね。この問題が解けるとその宇宙の形が分かるんだ。
佳  ・・・すごくないそれ?魔法みたい。
正路 ああ、そうだね。でも、百年間この問題は誰も解いたことのないんだ。
佳  マジで? 
正路 うん。だから何人もの数学者がああだこうだいいながら未だに解こうとしてる。
佳  百年間も?
正路 そ、で僕もその一人ってこと。
佳  へー・・・やっぱ、しょうちゃんってすごいね。
正路 はは、すごくないよ、問題が解けた訳じゃないからね。
佳  でも、百年間誰にも解けない問題って、なんだか怖いね。
正路 ・・・どうして?
佳  ううん、なんかさ。それが解けちゃったらさあ、百年間誰も見たことないものが見えるってことでしょ?それこそ宇宙の果ての形まで。
正路 うん・・・。そうだね。
佳  それってさ、なんか寂しくない?
正路 え?
佳  だってさ、自分の見たことを伝えようとしても、それってすごく難しいじゃん? うまく伝えらんないし、すれ違うし。まして、それが、だれも見たことない光景だったら。
正路 ・・・。
佳  もしかして、誰も解ってくれないんじゃないのかなって。
正路 ・・・。
佳  ・・・ごめん、やっぱ今のなし!
正路 え?
佳  くだらないこと言っちゃった! ごめんね?
正路 いや・・・。
佳  私一端帰るね?親にも報告しなくちゃ。
正路 ああ、うん。
佳  じゃあね!

   佳、そのままはける。正路、それを見送り、問題を解こうとするが手が止まり、集中しようとしてもなかなかできない。