シロクロモノクローム
第四十話:お、おかしいでしょこんなの
<コンポーザーの権限により、デバック申請は受領されませんでした>
コンポーザーと言うのがなんであるかは解らないけれど、デバックが受け付けられなかったということはわかった。
「な、なんで? ぼくなにか間違えましたか?」
「い、いや。デバックは完璧だったはずだ」
また新しい文章が表示される。
<コンポーザーの権限により、空間プログラムが一部バグ化されます>
この文章が表示されたあと、大きな地響きとともに、地面が大きく波打った。
僕らが乗っているダンプカーから少し離れたところで、地面の一部がまるでアメーバのように伸び縮みしながら、五階建て位の高さまでになり、やがてその元地面は、アメーバのような体から、重厚な岩のような質感になり、手が生え、口が開き、大きな空洞のような目が付いた。まるで岩の巨人。その巨人は、犬のバグの時とは比べ物にならない、大気自体が揺さぶられているかのような咆哮をあげた。
「ったく、なんだってんだ!」
クオリアさんがダンプカーのタグを解除して、ぼくら三人はその巨大なバグと対峙する。
その巨大すぎるバグに気圧されて、ぼくの膝が笑いはじめる。お、おかしいでしょこんなの。そ、そうだ、これもバグならデバック出来るんじゃないか。ぼくは急いでデバイスを呼び出した。しかし、そこには、
「な、なんで?」
一行も、プログラムのスクリプトが表示されていなかった。
作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景