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シロクロモノクローム

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第三十六話:ループループ



はじめは愉快だったこのドライブも、何時間もたつと、少し憂鬱になってきた。
ダンプカーは結構なスピードで爆走している。けれど、相変わらず、景色は変わらず。
なんだか進んでいるというより、ずっと同じ場所で走り続けているような気分になってきた。何かに似ている。ああ、そうだ。トレーニングセンターとかにあるランニングマシンみたいな感じ。
「おーいカジ」
運転しながら、クオリアさんは後ろのカジ君に話しかける。
「なんスかクオ兄さん」
「もう大分走ってるが、お前の仲間がいるっていう場所に全然たどり着かないぞ?」
後ろからカジ君が「うーん」と唸る声が聞こえた。
「確かに、もうそろそろ見えてきてもいいはずなんスけど。おかしいな」
少しの沈黙のあと、クオリアさんは小さく「まさか」とつぶやいて、ダンプカーを突然止め、タギングを始めた。
―<tagging>  HTML analyze <run>―
クオリアさんの顔の前に、スクリーンが現れた。そこにはびっしりとタグが書かれていて、それをクオリアさんは熱心に見ていた。その額には一筋の汗が流れている。
「どうかしたんですか?」
クオリアさんの様子から、なんだかただならないことが起きている事をなんとなく把握した。いったい何を、クオリアさんは気がついたのか。
「ありえねえ」
クオリアさんは青ざめた表情でスクリーンを凝視する。
「この空間自体が、バグっちまってる」

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景