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シロクロモノクローム

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第三十四話:皆で行こうぜ



僕の訴えを聞いて、急遽カジ君は着地してくれた。
真っ白な世界だけれど、地面があるって素晴らしい。
ぼくはヘタリと座り込み、一つ大きく息をした。
「ったく。苦手なら苦手ってはじめに言えばよかったじゃねえか」
クオリアさんは呆れた様子でそういった。
「だってだって、高いところはダメでも飛ぶなら大丈夫だと思ったんです」
「いやダメだろ」
「ダメっすね」
迅速かつ容赦なく、二人はツッコミを入れてきた。
なんだか悔しい。ぼくは確かに高いところが怖い。けれど、空を飛ぶって言うのはひとつの憧れだったんだ。木のホウキに乗る魔法使い、スーパーマン、空飛ぶドラゴン、飛行機乗り。空を飛ぶ事のできる人たちってのは、なにかカッコよくて、世界から自由な存在のようにぼくには見えるんだ。だから、ぼくも飛んでみたかった。ただそれだけなんだ。
「まあ、急いでいるわけでもないからな、カジには悪いけど、空の旅はこれにて終了だな」
クオリアさんはいじわるそうにそういった。
「いいですよ、二人は空の旅で。ぼくは歩きます」
「おいおい、いじけるなって」
「いじけてません。カジ君は歩くより飛ぶ方が楽でしょ? 足をひっぱるのは嫌です」
ぼくはそっぽを向いて歩き始めた。自分でもくだらない意地だって言うのはわかっている。けれど、そのくだらない意地がぼくの足を動かし続けた。
―<tagging> dumping dump car size LL <run>―
後ろからクオリアさんがなにかをタギングしたのが聞こえた。
直後、爆音とともに、巨大なダンプカーがぼくの横に止まった。
運転席にはクオリアさんが、ダンプカーの後部にはカジ君がゆったりと乗っていた。
「こいつならカジも快適だ。せっかく三人なんだ、皆で行こうぜ」
ぼくはしばらくぽかんとして、なんだかじわじわとうれしくなった。
「エスコート用にしてはずいぶん野暮な車ですね」
しばらくの沈黙の後、ぼくらはお腹を抱えて笑いあった。

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景