シロクロモノクローム
第三十二話:根拠のない大丈夫
きょとんとしている僕らを尻目に、カジ君は話を続ける。
「えっと、お二人は何でこの世界に来たか解らないんスよね? それがひっじょーにまずいんス。この世界、<モノクローム>っていうんスけど、見ての通り、何もないんス。この何もない世界で自分を何か分からないってことは、存在自体があるかどうかわからないって事と同義なんス。んで、そういう人達は<イレギュラー>って言って、モノクロームの秩序を破壊する存在として恐れられているんスよ」
クオリアさんは首をかしげ、カジ君に尋ねる。
「なんで自分が何か分からないと、世界を破壊する存在になるんだ?」
カジ君は困ったような顔をして、しばらく沈黙した後、
「うーん、そう言えば何でなんだろう。俺もそういう風にいい聞かせられただけで、何でかは知らないんスよ。とにかく<イレギュラー>はおっかない存在だから関わっちゃダメですよーって教えられるんス」
クオリアさんは、ぼくと自分を指差し、カジ君に尋ねる。
「俺と、ナナ。そんなおっかない奴らに見えるか?」
「みえないッス」
「なら大丈夫だろ。別に俺らも世界をぶっ壊そうなんて考えちゃいないし、するつもりもないしな。そうだろ? ナナ」
突然話を振られて少し驚きつつ、ぼくは頷く。
「大丈夫、なんスか?」
「大丈夫、大丈夫! 取って食うつもりなら始めっからそうしてる。んでよ。相談なんだが」
クオリアさんはにやりと笑って言う。
「お前の仲間を助けてやるから、ちょっと俺らがこの世界から出る方法を一緒に探してくれ」
作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景