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和尚さんの法話 「地獄」

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そのお客さんは、他のことで和尚さんに運命の相談に来た人で、何処の何方か何処に住んでるのか知らないわけです。

それで和尚さんは、その人に貴方のご先祖に坊さんはいらっしゃいますかと聞いた。

そのお客さんは、それは私の主人の父親でございますと。

だからこの人はお寺の奥さんかなと和尚さんは思ったんですね。

で、家は寺ではないんですが、私の主人の父親はお寺の坊さんでございましたと。

ところがその坊さんは、黒暗地獄へ落ちてるんでしょ。

で、日頃の行いが、きっと悪かったに違いないと想像したんですね。

で、心にそう思いながら、失礼ですが聞いてみたんです。

その和尚さんの日頃の行いはどうでございましたでしょうかと。

そうすると、そのお客さんは、考えずに、即座にそれはもうとんでもない和尚さんだった、評判の和尚さんだった。あれが坊さんかと言われるような和尚さんです。

それでいろんなことを聞いたそうで、なるほどなと思ったんです。

そこへもって、女の人を沢山作って、子供さんがあっちも、こっちも出来てるんですね。

そして、お恥ずかしい話しでございますが、私の主人はその一人でございますと。

だから最初に和尚さんが見た黒暗地獄に落ちてるんですね。

立派な和尚さんでしたよと、こういうたら和尚さんの見間違いですが、話しを聞いてみると、なるほどなと思ったわけです。

だから地獄があるということになりますね。

そしてこの黒暗地獄というのは、判りませんが、痛くも痒くもないのかもしれませんが、二日や三日と違うんですよ、この坊さんは明治時代の人なんですよ。

だから今日まで100年、これからまだどれくらい続くか判りませんね。

ですが、100年もどうですか、そんな暗い地獄でじーっとしてるというのも辛いんじゃないですか。

痛くも痒くもないかもしれません。が、何処を見ても真っ暗で誰もいないんですよ。

ですから和尚さんは地獄を見てるんです。



もうひとつは別のお客さんが来たんですが、その人の後ろに霊魂が出てきて、その霊魂の後ろに鬼が付いてたんです。

これも地獄に落ちた人だと思ったんです。

この霊魂というのは、死んだときの姿のままで居りますから、幾つ位の人やなと、霊魂を見たらだいたい想像がつくんですよね。

で、70歳前後の人やなと判るんですが、鬼がついてるんですから人相が悪い。

陰険で邪険で隣近所からつまはじきされてるし、近所の付き合いも嫌だったような人と違いますかと、そんなふうな人だったんと違いますかと聞いたら、それは私の姑さんでございますと、即座に返ってきた。

和尚さんは、その人が姑さんかどうかは知らないんですからね。

顔立ちがこうで背格好がこうで、歳が幾つくらいで、性格がこうでと言うと、それは私の姑さんですと。

だから和尚さんが見た姿とあってるということですね。

これはやっぱり鬼が付いてるんだから地獄があるということですね。

この人は地獄へ落ちてる人なんですよ。

その人は姑さんがどうかしましたかと言うたんですけど、和尚さんは地獄へ落ちてると、言いかけたんですけど、言うと酷いなと思ったので言えなかったそうです。

兎に角、良い所へは行ってないと言うたんです。

だから世間一般でするような、とうり一遍のお義理のようなお勤めでは到底この人は救われませんと言うたんです。

だから、地獄は存在するんです。


『あの世はあるんですよ』

ですから皆さん、地獄を信じて頂きたいと思うんです。

地獄を信じたらテレビで見るような殺人というような犯罪は到底、出来ないと思うんです。

地獄もありますし、極楽もありますし、お経の説かれてるとうりなんです。

お経は漢文になっててわかりませんが、判らんままに読んでもそれはそのまま功徳になるんですから。

般若心経なんて、坊さんでも判らんのですよ。

あのお経はあの世を説いたお経なんです。

それをあの世をご存じない坊さんが解釈して、般若心経の講義として沢山の本が出てますが全部間違ってるそうです。

あの世の体験を持たない坊さんが解釈してるんですから解けないですよね。
自分の常識で判断してるわけです。

あの般若心経というお経は、それは難しいお経で、あの世のことが判らんと解けないお経です。

色即是空と出てきますけど、あの色というのは、この色や形のあるものと、普通はこういう物質を色と書いて色(しき)というんですが。

ところが、本を出してる人達は、色を物質、身体で言えば、肉体。
物で言えば物質。

と、今我々が見えてるものを色と、こういう説明をしていると思うんです。

そうじゃなくて、この世のこの物質も色だけれども、あの世にも色があるんです。
だからこの話しにも霊魂の姿が出てきましたように、これは皆、色なんです。

あの世にも色があるんです。

無表色というのがありまして、これは表すことが出来ない、表現することが出来ない色ということです。

和尚さんはそういう色を体験してるから判るんですが、皆さんにこういう色ですよと、見せることが出来ないんです。

我々が修行をして、禅定に入って体験をして無表色を体験しないと、こういうものなんだと、見せることが出来ないんです。

現すことの出来ない色ということがあって、これは霊界の色なんです。

だからこのお話にあったように地獄の様が出てきましたが、これは皆無表色なんです。

だから今の坊さんの般若心経の解説は、それからしても間違ってるわけです。

ですが、皆さんは訳は判らんでも、お経を読んでたらそれは皆功徳になるんです。

以前にもこのお話はしてると思うんですが、初めての方もいらっしゃいますのでお話しますが、和尚さんのお寺へ昔よく来てたお客さんのなかに、死んだ人の夢をよく見る人がいまして、

例えば、女学校時代の友達が夢に出てきて、おろしを食べたいと言うんですね。

あの人はそんなに、おろしが好きだったんかな、そんなのは聞いたことがなかったけどなと思ったんですね。

それで死んでからだいぶたってるので、また拝みに行ってあげようと思って、行ったんです。

それで、そのお母さんに、昨夜、あの子の夢を見ました。

あの子はおろしが好きだったんですか。

私、おろしを食べたい。おろしを食べたいと言ってました。

それを聞いたお母さんは、びっくりして、あの子はおろし餅が好きだったんです。

つきたてのほやほやのお餅に大根をすったおろしをかけて食べるんです。

それが好きだったんです。

もちろん、お餅も好きなんですよ。

それで、死んでしまったんだからもうおろしまでかけなくてよかろうと思って、お餅も好きだったので、お餅は供えてあげてるけど、おろしはかけてなかったんです。

そのことを夢で言うたんだということになって、それからいつもおろし餅を供えるようになったということです。

そういう夢をよく見る娘さんです。

ところが、そのお兄さんは無心論者で、いつもあの世がある、あの世は無いと、言って議論するんだそうです。

あの世があるから夢に出てきて、おろしを食べたいと言うたんでしょ。
作品名:和尚さんの法話 「地獄」 作家名:みわ