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レンタル彼氏。~あなたがいるだけで~

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 冷たいコーヒーが咽を潤してくれる。咽がどれくらい渇いていたかが判るというものだ。この時点でワインの酔いはすっかり醒めていた。
 美奈恵が最後の一滴を飲み終えると同時に、身体がふわりと浮いた。思わず悲鳴を上げた美奈恵は茫然として自分を抱き上げている男を見つめる。
「さて、そろそろやるか?」
「えー、またなの?」
 正直、かなり呆れ気味である。
 しかし、剛史は美奈恵に考える暇さえ与えなかった。美奈恵をベッドに転がすとすぐに上から覆い被さってきて、待ちかねたように口づけの雨を降らせてくる。
 首筋や鎖骨、丸い胸のふもとからゆっくりと膨らみを辿り、やがてチュッと音を立ててグミのような可憐な乳首に到達する。
「剛史、くすぐったいよ」
 首筋に熱い吐息がかかると、美奈恵が身体を捩った。剛史は面白がって、わざとそこを集中して攻めてくる。時に痕を残すくらいにきつく吸い、鬱血の痕を残しながら。
「痛っ。剛史、噛まないで、痕が残っちゃうから」
 美奈恵が思わず抗議すると、剛史が意味ありげに上から覗き込んでくる。
「別に良いだろ。俺以外の男に裸見せるわけじゃないんだし。それとも、お前、誰か他の男と寝るつもりなのか?」
 最後の科白はかなり本気なのが判る。眼が据わっているので、応えようによって彼の嫉妬心に火を付けたら、また酷い抱かれ方をされてしまう危険性もある。
 美奈恵は慎重に言葉を選んだ。
「そんな男がいたら、その人に契約結婚の話を持ちかけるよ」
「―」 
 しばらく身体中にキスしていた彼が満足げに美奈恵の身体を眺めた。
「これでお前の身体中に俺の徴をつけた。しばらくはお前も浮気はできないぞ」
 見れば、美奈恵の白い膚にはまるで梅の花が咲いたように至るところ、鮮やかな吸い痕が刻まれていた。
「酷い。こんなに痕をつけて」
 美奈恵の眼に涙が盛り上がった。
「ああ、何でこれくらいで泣くんだよ。お前って、そんなに泣き虫だったか?」
「剛史が意地悪だからよ。痕はつけないでって頼んだのに」
 美奈恵の白い頬を涙の粒がころがった。
「判った、判ったから。謝るよ。これからは美奈恵が嫌がるようなことはしないから、だから泣くなよな」
 剛史は美奈恵の顔をしみじみと眺めた。
「これからは美奈を泣かせるようなことはしない。俺、本当に今、幸せなんだぜ。美奈をこうやって抱くのがずっと夢だったんだから」
 二人はしじまの中でしばし見つめ合った。視線と視線が宙でもつれ、また離れる。刹那、美奈恵には視線が交わった場所に蒼白い焔が見えたような気がした。
 やがて静かに剛史の唇が降りてきた。美奈恵は今度は心からそれを受け止めた。
「こういうときは瞳を閉じて」
 剛史が笑いながら言うと、熱く濡れた吐息が首筋をくすぐる。
「剛史、くすぐったい」
 美奈恵がまた僅かに身体をひねるのに、剛史がひそやかな笑い声を立てた。
 何とも官能的な極上のワインのように女の心を酔わせる声だ。
「お前の身体は元々感度が良いんだろうな。すっかり感じやすくなってしまったみたいだ」
 剛史の悪戯な手がそろりと下方に伸び、美奈恵の花唇をスと撫でた。与えられた微かな刺激にも華奢な身体がピクンと跳ねる。
 やがて、割れ目を撫でていた指は花唇を割り、蜜壺へと差し入られた。
「剛史っ、や―」
「いやじゃないだろう? もう、こんなに濡らして。お前は俺を絶倫だと言うが、俺から言わせれば、お前も相当淫乱な女だぞ。もう数え切れないくらい達ったのに、少し俺に触れられた程度でこんなに濡れるんだから」
 剛史の指が蜜壺の奥深くへと入り込み蠢き始めると、美奈恵の桜色の唇から、ひっきりなしに艶めかしい喘ぎ声が洩れ始めた。
 その声すら誰にも聞かせまいというように、剛史が美奈恵の唇を狂おしく塞ぐ。
 唇がぴったりと重なり、舌と舌を繊細に絡ませ合い、身体は彼の腕の中に丁度良い具合に収まった。
 しばらくは濃厚なキスが続き、やっと剛史が長い口づけを解いた。彼が傍らに肘をついて覆い被さり、美奈恵の下唇を啄んだ。
 美奈恵はこの瞬間、彼への想いが溢れたのを知った。水は溢れ、もう二度と取り返しはつかなくなった。
 美奈恵の眼に新たな涙が湧く。
 剛史が腑に落ちかねる表情で訊いた。
「何で泣く? 俺とこうなったことを後悔してる?」
 美奈恵は小さくかぶりを振った。
「幸せだからよ」
 剛史はそれについては納得はしていないといった表情だが、追及はしなかった。
 ややあって、美奈恵は思い切って口にした。
「剛史が私に惚れてるっていうか、好きって本当なの?」
「そんなことで嘘ついて、どうするんだよ」
「でも、何だか今も信じられなくて」
 剛史が判らないというように首を振った。
「何で今になって、そんなことを言う? 俺が好きでもない女に無理強いしてまで、こんなことをする男だと思ってるのか?」
 美奈恵は潤んだ瞳で彼を見上げた。
「ごめんなさい。夢のようだから、今でも信じられないのよ」
 夢のように幸せだから。繰り返した美奈恵を剛史は燃えるような眼で見た。
「ということは、お前も俺を?」
 美奈恵が笑った。
「さっきの科白はそっくり返すわよ。私が好きでもない男とこんなことする女だと思ってる?」  
 と、剛史は照れたように頭をかいた。
「最初はまあ、かなり強引に抱いちまっただろ、だから、お前が本当に俺なんかで良いと思ってるのか、心から俺を受け容れてくれてるのか自信がなかったんだ」
「いつも強気な剛史らしくないね。剛ちゃん、私だって女の意地も誇りも持ってるよ。昔の女の人ではないけれど、私は本当に大嫌いな―触れられるのも嫌な男だったら、きっとレイプされる前に自分から死んじゃうと思う。だから、たとえ強引に抱かれることになっても、剛史を結局は受け容れたんだよ」
「そうか、なら、俺は少なくともお前に嫌われてはいないってことだよな」
 美奈恵は微笑んだ。思わずゾクリと肌が粟立つほどの凄艶な色香が溢れる微笑だ。しかし、当の美奈恵は男に自分がどれだけの影響力を与えているか、まるで判っていない。
 もっとも、それが美奈恵の最大の魅力なのだと長年彼女だけを見てきた剛史は知っている。
「私も剛史と一緒、剛史とこうなれて幸せ」
「お前ってヤツは本当に罪な女だな」
 剛史がニヤリと口角を引き上げた。
「これ以上、俺を虜にして、どうする気だ? それに、そんな可愛いことを言ったら、また抱いちまうぞ?」
 また引き寄せられそうになったので、美奈恵は咄嗟に言った。
「剛史、今度は私にもさせて」
 剛史が形の良い眉を心もちつり上げた。
「美奈、何も俺は別に、お前にそんなことを求めたりはしてないぞ」
 美奈恵は微笑む。
「良いの、私がしたいの。剛史が私をたくさん良い気持ちにさせてくれたから、私も少しくらい剛史を良い気持ちにさせてあげたい」
 剛史が苦笑した。
「ホント、お前って可愛いな。見てみろよ、お前が可愛いことばかり言うから、また、このザマだ」
 見れば、剛史の股間はまたしても見事に膨らんでいる。美奈恵は極上の笑みで応える。
「じゃあ、丁度良いね」