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りんごの情事

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 その途中、二人は携帯電話ショップを通りかかった。來未は思わず足を止める。
「お、携帯?來未ちゃんもついに買う気になったのか!」
 きらきらスタイリッシュに輝くスマートフォンが置かれたディスプレイ。
「昔から、欲しいとは思っていたんですけどね…。」
「じゃぁ、ちょっと寄ってみる?」
「え、いいんですか?」
「別に、大丈夫だよ。」
 にっこりとほほ笑む仁田村。二人はショップの中へ入って行った。
 スマートフォンを手に取り、その感覚を感じ取る。薄かったり、軽かったり、大きかったり、スライドさせるとボタンが現れたり、色んな種類がある。カラーバリエーションも豊富だ。値段を見ると大体相場は5〜7万円くらいのようだ。
「でも、くーちゃんは新規で購入だから、結構安くなるんじゃない?」
「本当だ。すぐに買えるかも。カード使えば、買えるかな?」
「くーちゃん、高校生なのに、カードなんか持ってるの?」
「親が、いざという時使え、って持たせてくれたんですけど、なかなかいざって時が来ないから、今まではつかって来なかったんです。でも、今がいざという時だと思う。」
 仁田村は、來未のことを、なんと思い切りが良い子だろうと感心しながら、携帯電話の選別のアドバイスをしてあげた。そして、仁田村のアドバイスの元、來未は一番最新型のスマートフォンを購入することに決めた。いざ、カウンターへ持っていく二人。仁田村も一緒に來未の購入の様子を見守る。
「はい。では、こちらのお電話でよろしいでしょうか。」
「はい。」
 緊張した面持ちの來未。背筋をピンとしたまま不動である。
「ところでお客様、お客様はまだ未成年でいらっしゃるので、ご両親から同意書等を頂かなければならないんですが、えっと、…。」
 従業員が少し戸惑った様子で、來未の隣に座る仁田村を見つめる。
「ううん、すみません、未成年が購入に必要な書類って、その同意書と他に何があるんですか?私はただの付添なので、すぐには準備できないんですが…。」
 初めて仁田村が「私」という一人称を使っていることに來未は感心したが、仁田村は、どんどん話を進めていき、未成年が購入するために必要な書類をそろえれば、後は購入できるという状態まで、話を進めてくれた。
 派手な装いをして、世の中の常識とはかけ離れた存在に見えた仁田村だったが、実は意外と常識を兼ね備えている。意外と、頼りになるみたいだ。
 二人は店を出た。
「來未ちゃん、残念だったね。でも、ご両親にこれらの書類を請求すれば、すぐに携帯持てるから、大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。」
 しかしながら、現在、來未は両親とは音信不通だ。どうしたらいいのだろう。
 來未は、意外と頼りになる仁田村に、思い切って事情を話してみることにした。
 すると仁田村は、「ええー!」と大きな声をあげて驚いた。
「くーちゃんの親ってすんごい放任主義なんだね。」
「はい。その癖決める時はいつも勝手で、私の意見なんか聞いてくれません。」
「へぇ〜。くーちゃんも苦労してきたんだね。それでよくぐれないで、勉強も出来る優等生に育ったもんだ。」
「多分、両親を反面教師としていたせいで、なんだか冷静になっちゃったみたいです。」
 來未は自嘲的に乾いた笑いをあげる。
「ま、でも、あれでしょ、両親が外国にいる間は昔野がくーちゃんの面倒見るとかって言ってたから、昔野に頼めばなんとかしてくれるんじゃない。買い物終わったら、昔野のところに行ってみようよ。」
 
作品名:りんごの情事 作家名:藍澤 昴