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りんごの情事

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第3話



 明日から学校が始まる。

 上手く馴染めるかな。

 東京の春もまた地元と同じで、温かで優しい。

 桜の花も薄靄の青空に向かって咲き乱れ、はらはらと舞い散る。

 路肩の脇のアスファルトの隙間から、たんぽぽが黄色のたてがみをお披露目し、

 ふわふわとモンシロチョウがやってきて、挨拶を交わす。

*****************
 
 学校が始まった。
 クラス替えが行われたこの教室は、なんとなく雰囲気が落ち着かず、よそよそしい。1年生の時、同じクラスだった者同士や、同じ部活の仲間で集まったり、少しお互いをけん制し合いながらクラスの中で分裂現象が起きている。
 來未は、ホームルームが始まって早々、転校生として皆に挨拶をしそれから、次の休み時間で前の席の女子と会話を交わした。福井から来たんだ。福井ってどんなところ。部活は何やってたの?色々聞かれたので、來未は丁寧に答え、そして、同じことを質問し返した。
 彼女の名前は、加藤風子という。丸顔で、ギリギリ肩に着くか着かないかの長さの良く言えばボブ、悪く言えばおかっぱ頭。でも、目がクリクリとして、愛らしい感じの女子だ。
 野球部のマネージャーをやっていて、再来週、秀麗学園と練習試合があるということを話していた。秀麗学園は甲子園に何度も進出したことがある、超名門校らしいが、來未の知ったところではない。甲子園に行く名門校といえば、來未は福井のあの高校しか知らない。
 風子は、「友達になってせっかくお話しした記念に」ということで、來未にメアドの交換を求めてきた。
 しかしながら、來未は、このご時世に携帯電話というものを持っていない。そのことを話すと風子は大層驚いた様子だった。
 それから、風子の友達ともお話しした。ソフトボール部の時田まゆ、バスケ部の山辺かおりと矢田春香。彼女たちもまた、來未とメールアドレスの交換を求めた。そして、來未が携帯電話を持っていないことを知ると、大層驚くのだった。

作品名:りんごの情事 作家名:藍澤 昴