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Last Message

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東京からやってきた、外車を乗り回すその男が
アパートを借りてくれたらしい、小学生になる春のことだ。

母とおばあちゃんと3人で引っ越し、たまに男は遊びに来る。
私はその男を「お兄ちゃん」と呼んでいた。
お兄ちゃんは、私と近所に住む従兄弟をとても可愛がってくれて
東京から遊びに来るとどこかに連れて行ってくれた。
大人の世界はよくわからないし
私にとってはどうでもよいことだった。
しかし、そんな簡単にはすまないどうでもよくないことが起きるのが人生だ。

いつまでたっても
お兄ちゃんと母は一緒になる気配はなく
相変わらず母は水商売をしていた。

お兄ちゃんは、ある日突然遊びに来なくなった。

母が何をしていたか、この頃の記憶はあまりない。

私はおばあちゃんと二人で暮らし、
母は、お兄ちゃんではない、他の男と隣の町に住みはじめた。

家の前で遊んでいると材木屋のお兄さんが
「みーちゃんの、お父さんになってもいい?」
優しい笑顔で私の手を握った。
母の男関係はよくわからなかったが、お父さん候補は他にもいた。

ある夜中、親戚みんなで母の住んでいるアパートに車で駆けつけた。
私は何が起きているのかわからないまま
おばあちゃんの後をついていった。

アパートの外には救急車が赤いランプを回したまま停車していた。

部屋の中に入ると、布団に寝たまま頭のほうに洗面器を置き
手首をその中に入れたままのの母の姿があった。
洗面器の中は真っ赤な血でいっぱいだった。

母は、手首を切り、ガス自殺を図ったのだった。
すぐに救急車で運ばれ一命は取り留めた。


私はその時、捨てられたのだ。


帰りの車で後ろの席に乗っていた私に
母の従兄弟にあたる叔父が言った。

「おい、何笑ってんだっ!」

笑ってなんかいない。

「おかあさん」と泣きすがることもなく
黙って見ていた母の自殺現場。

母はこの時のことについて口にすることはない。
母より女を選んだ母親に私はきっと
この時から憎しみを覚え始めたのかもしれない。


作品名:Last Message 作家名:momo