無題
卒業式以来、2人は付き合う事となった。そして、付き合ってからの2人は一気に距離を縮めた。恋人同士がするような事は全て済ませた。中学2年生の邂逅尾の時より、2人はそれほど、互いに互いの距離がもどかしかったのだ。毎日のように求め合い、毎日のように果てた。いつもなら余韻に浸り、そのまま眠りにつくのだが、今日は桜花の様子がいつもと違い、暗い。そして、桜花は静かにこう言った。
「大輝、私ね、もうすぐ引っ越さなくちゃいけないんだ。学校の近くなんだけど・・・こうやって毎日会えなくなるね。」
「引っ越すって言っても隣町だろ?俺は桜花が望めばいつでも会いに行くよ。」
大輝はそう言って桜花の手を強く握った。桜花は「ありがとう。」と言って、手を強く握り返した。曇った表情は大輝のその一言で花が咲いたように晴れやかになった。
中学在学中のもどかしかった2年間、2人の気持ちは伝えずとも変わらなかったのだ。大人になっても互いにずっと同じ気持ちでいられる。ずっと傍にいられると2人は信じて疑わなかった。