ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.
【光大】「……」
乙愛の涙がしみ込んでくる。
あったかい想いが、一つ一つの雫から感じた。
こういうときって、頭を撫でた方が、いいのだろう、か?
俺はとっさに泣いている乙愛の頭を、優しく撫でる。
【光大】「……だったら俺も、ありがとう、かな」
【乙愛】「うっ……どうして?」
『前に進む意志を教えてくれたこと』、と言いたいけど……。
【光大】「ひみつ」
俺はこの異空間の空を見つめた。
※フェードアウト
■空間の狭間(インタスティス) 全景 黒紫色の空間
※フェードイン
※立ち絵を表示しない
【乙愛】「ん……」
【光大】「落ち着いた?」
【乙愛】「うん……なんとか」
そう言って、乙愛は俺から離れる。
※ボロボロの乙愛の立ち絵を表示。苦笑(顔を赤らめている)
【光大】「ははは……なんか、照れるな」
※ボロボロの乙愛、不満
【乙愛】「ほんと、迷惑かけおって」
【光大】「ははは……」
【???】『人の子よ』
※ボロボロの乙愛、驚く
【光大・乙愛】「!」
※ボロボロの乙愛の立ち絵を表示しない
突然、どこからか声が聞こえてくる。
火奄は倒したけど、まだ何かあるのか?
※ボロボロの乙愛、驚く
【乙愛】「この声……まさか!」
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 紅い光 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※光が集まる音
【光大】「……っ!」
紫の空に紅い光が集束する。
※光る音
※画面がピカピカと紅く光る
ピカ―――――――――ッ!
【光大】「うわっ!」
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 紅の神玉 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【光大】「玉?」
紅い光は、小さな玉へと変わった。
【乙愛】「これは……紅の神玉!」
【光大】「え? ……ということは」
紅い玉は、意志が宿っているかのようにゆっくりと降下し、俺たちと同じ目線となる。
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■空間の狭間(インタスティス) 全景 黒紫色の空間
※横ワイプ(さっと表示)
【光大】「あ、あんたは火奄……なのか?」
紅い玉は光を放つ。
※紅の神玉となった火奄を表示、光る
【火奄】『左様。そなた達のおかげで、我は悪しき霊の呪縛から解くことができた。感謝する』
【光大】「あ、いや、当然のことをしたまでだ……です」
威厳のある言い方に、思わず敬語になってしまった。
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『……普通でよい』
神玉の中から、苦笑いを浮かべているように聞こえる。
※ボロボロの乙愛の立ち絵を表示。真剣
【乙愛】「では火奄。なぜ五聖神であるおまえが、なぜポルターガイストたちに憑りつかれたのか、教えてもらえないか?」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『……この島の奥底に眠る闇の根源から生まれたアヤカシから守るために、我は社殿から力を使っていたのだ』
闇の根源――ジャームのことだな。
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『しかし、人間たちによる破壊により、我の力では足りないほどの数が増えてしまった』
【光大】「!」
※ボロボロの乙愛、真剣
【乙愛】「やはり、自然の破壊によるもの、か」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『左様。人間たちの破壊により、この島は今、滅亡へと向かいつつある。他の化身たちとの交信は途絶えており、我らを統べる『森』とも、な』
【光大】「なんだって! じゃあ、他の化身達も……」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『我と同じように、そなたらの言うポルターガイストたちを滅し続けることで精一杯なのか、蝕まれてしまったか……』
【光大】「……っ」
※ボロボロの乙愛、悔しい
やはり政府も、原因のひとつ、か。
※ボロボロの乙愛、真剣
【乙愛】「ということは、『未来技術推進計画』という、破壊から生み出そうとする馬鹿げた連中を追い出せばいいのか?」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『それも一つの手ではある。だが、負の根源の噴出も抑えなければ、この島はやがて、おまえの時代のように……』
※ボロボロの乙愛、悔しい
【乙愛】「……」
【光大】「乙愛」
※乙愛と火奄の立ち絵を表示しない
その事実に顔を下に向け、憎悪と悲しみが混じった顔をする乙愛。
このまま二つを止めなければ、乙愛に見せてもらったあの地獄絵図のように――。
※画面が白く光り、すぐにCGが切り替わる。
■回想 映し出された40年後の宮島
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※数秒ウェイト
※画面が真っ白になり、すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 全景 黒紫色の空間
……だったら!
【光大】「だったら、俺たちがそれを止めてやる! ポルターガイストもジャームも政府の人間も! 俺の好きなこの宮島を、運命を変えてやる!」
俺は拳に力を込めて宣言した。
※ボロボロの乙愛、驚く
【乙愛】「コータ……いいのか?」
【光大】「何が?」
※ボロボロの乙愛、驚く
【乙愛】「いや。これは、私ひとりでやろうと」
【光大】「そんなこと言うなよ。これは……今を生きる俺たちの問題なんだ。誰かかやらないと未来がヤバいんだ。だからって未来人に任せて、俺たちは何もしないなんて、不公平だろ?」
【光大】「それに、これも――」
俺は乙愛にリストバンドを見せる。
【光大】「じいちゃんから貰ったこのリストバンドもきっと、俺がこんなファンタジーなことを体験すると、分かっていたのかもしれないしな」
※ボロボロの乙愛、不満
【乙愛】「その言葉……私をまだ幻惑だと思っているのか?」
【光大】「もう思ってないって」
※ボロボロの乙愛、通常
【光大】「――だから、ちょっとめんどくさくて、スケールがデカいけど、これが俺のやるべきことなら、やってやる。乙愛と一緒に!」
※乙愛の立ち絵を表示しない
未来は動かないと意味がない。だからこそ、今まで動かなかった俺が進んだらどうなるか、見てみたい。
俺の可能性を確かめたい。戦いを通して!
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『……』
【光大】「火奄、俺たちにおまえの力を……!」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『よかろう』
【光大】「え?」
※紅の神玉となった火奄、光る
【火奄】『おまえの覚悟、しかと受け取った。ならば我もおまえたちと共にいることしよう。必要ならば、いつでも力を貸してやろう』
【光大】「火奄……」
作品名:ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer. 作家名:永山あゆむ