ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.
【乙愛】「ポルターガイストは、アヤカシの一種だと言っただろ……エルクルの力を使うバスターウェポン以外の武器は、すり抜けてしまうんだ」
【光大】「マジかよ……」
これでは、なす術がないじゃないか。
このまま空間を戻して、こいつに好き放題させてもいけないのに。
どうすればいいんだ。
……どうすれば。
【乙愛】「コータ」
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■空間の狭間(インタスティス) 自分のリストバンドを渡そうとする乙愛 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※横ワイプ(さっと明るくなる)
乙愛はリストバンドを外す。
その瞬間、乙愛が持っていた武器が消え、青紫色の空間は、無機質な黒紫色の空間へと変わる。
火奄の姿も、炎が集まった蛇のように見える。
やはりあれは、火奄を目視するための光だったのか。
しかし、なぜこんな時に。
【乙愛】「これを持って、逃げろ」
【光大】「!」
突然の出来事に衝撃が走る。
【乙愛】「このまま二人とも死んで行ったら、この島は滅びるだろう。そうなれば……未来も失われてしまう」
【光大】「……」
【乙愛】「私は、お前が逃げた後に、タイムシフトでゲートを閉じ、火奄を閉じ込める」
【乙愛】「お前はこれを持って、こいつらと戦う力を身につけてくれ……」
【光大】「ば、馬鹿言うな! おまえ一人を置いて逃げれねぇつうの!」
【乙愛】「しかし、バスターウェポンを持たないおまえでは戦うことができない」
【乙愛】「それにこれは、訓練をしないと……使いこなすことは、ほぼ不可能だ」
【光大】「だからって……」
確かに、この状況から一度逃げても変わらないのだ。火奄により、宮島は滅却された島となってしまう。
そしてそれは、未来にいる乙愛を知る者たちも、生まれずに死ぬってことも意味する。
でも……仮に乙愛の提案で火奄の暴走を止めてたとしても……『乙愛という犠牲者』が生まれてしまう。
それでは、意味がないじゃないか!
※フェードアウト
■画面が暗い
※画面が左右に揺れる
【光大】「だめだ!」
俺は喉に詰まったもの絞り出すような、悲痛な叫び声を放つ。
※フェードイン(次のCGに切り替わる)
■空間の狭間(インタスティス) 乙愛の手を握り、自分の気持を伝える光大 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【乙愛】「コータ……」
いきなりの怒声に、乙姫は瞠目する。
【光大】「俺は……乙愛に守られた分、守りたいんだ」
【光大】「それに、いやなんだ」
【乙愛】「いや?」
俺は大きく頷く。
【光大】「人を犠牲にしてまで逃げるってことが。……人を自分たちの利益になるように利用する政府と、同じだから」
【乙愛】「……」
【光大】「俺は、誰も犠牲にせずに、この島を救いたい!」
※フェードアウト(さっと暗くなる)
■空間の狭間(インタスティス) 光大の後ろ姿 黒紫色の空間
※フェードイン(さっと表示)
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
俺は立ち上がり、振り返って足を前へ踏み出し、上空に浮かんでいる火の玉の塊――火奄を見つめる。
【乙愛】「無茶だ、コータ。やられるだけだぞ!」
そうだ。返り討ちに合うだけ。
なら、俺はこれに賭けるしかない。
乙愛と同じような形をした――俺の青いリストバンドに埋め込まれた、白い球体の覚醒に。
もし、乙愛と同じリストバンドなら、発動も可能なはずだ。
頼む、同じものであってくれ!
俺は、左手でそこをギュッと押さえる。
――じいちゃん、頼む。俺に……俺に未来(まえ)へ進む力を……!
そう、念じた。
すると。
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 光大のリストバンド、光る 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※光りだす音
ピカ――――――――――ッ!!
【光大】「!」
念が通じたのか、俺のリストバンドが白く、激しく光り出す。
【乙愛】「な、なんだ!?」
光は凝縮され、球体の上に集まる。
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 浮かぶ、剣の形をした白い光 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※光る音
光は剣の形へと変わる。
【光大】「これは……」
俺は恐る恐る、それに触れる。
その瞬間。
※クロスフェード
■空間の狭間(インタスティス) 黄金の剣、出現 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※光がはじける音
光は拡散し、柄、鍔、そして刃までも、すべてが金色の――黄金の剣へと変わった。
【光大】「こ、これは」
俺は不思議な気持ちで、右手に握っている剣を見つめる。
乙愛のリストバンドと同じように、バスターウェポンなのか?
そして、このリストバンドは――。
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■空間の狭間(インタスティス) ボロボロの全景 黒紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※横ワイプ(さっと表示)
【乙愛】「コータ!」
後ろから座った状態で、乙愛が声をかける。
【乙愛】「試しに異霊空間(コンファインドスペース)、展開(アンフォールド)と言ってみろ!」
【光大】「え?」
【乙愛】「いいから、叫んでみろ!」
【光大】「わ、わかった」
俺は言われた通りに叫んでみる。
【光大】「こ、異霊空間(コンファインドスペース)、展開(アンフォールド)……」
※展開される音
バァン!!
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 光大、異霊空間(コンファインドスペース)を展開 青紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【光大】「うおっ!?」
乙愛のように自分を中心に空間全域に青紫色の光が広がっていく。そして。
【光大】「あ、火奄が!」
※すぐにCGが切り替わる
■空間の狭間(インタスティス) 火奄、龍の姿へ 青紫色の空間
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
さっきまで人魂のような、炎の塊だったものが龍の姿へと変化する。
【乙愛】「やはり……」
このリストバンドは乙愛のと同じ。
でも、なぜ……爺ちゃんが持っていたんだ。
……。
いや、詮索はやめよう。
そんなことよりも……これは好機だ!
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■空間の狭間(インタスティス) 光大、火奄を見つめる 青紫色の空間
※横ワイプ(さっと表示)
【光大】「乙愛……」
作品名:ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer. 作家名:永山あゆむ