ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.
俺の目の前に、黒のネクタイを締めた、高級そうな焦げ茶色のコートを羽織り、華奢な体にピッタリのタイトスカートを穿いた、尻まで届く長い黒髪の女性がいた。
どことなく学者か研究者っぽい容姿で、歳も俺よりも3歳年上に見える。
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼
※横ワイプ(さっと表示)
さっきの光は、夢じゃない……?
いやいやいや、普通、こんなことはありえない。夢に決まってる。
念のため腫れてしまった左の頬を触る。
【光大】(痛っ……)
……夢じゃない。
女性は髪をかきあげ、左腕にある、時計らしきものに目を向ける。
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示。通常
【謎の女性】「無事に着いたようだな」
【光大】「あ、あんた」
※謎の女性(乙愛)、真剣
【謎の女性】「ん?」
ようやく俺の存在に気づく。
※謎の女性(乙愛)、驚く
【謎の女性】「……おっと、人がいたのか、すまないな、驚かせて」
【光大】「あの光からでてきたのは、あんたなのか……?」
※謎の女性(乙愛)、真剣
【謎の女性】「そうだ」
……。
平然とした顔で、答えやがって。
こっちはものすごくびっくりしているっつーのに。
こんなことが現実に起こるはずがない。しかし、彼女がいることは紛れもない現実。俺はゲーム世界に行ったのか!? わけがわかんねぇ!!
【光大】「じゃあ、あんたは……あんたは、ゲーム世界の住人なのか!?」
自分でも突拍子もないことを言ってしまったと思う。
だけど、訊ねる言葉がそれしか浮かばなかった。
※謎の女性(乙愛)、不満
【謎の女性】「はぁ? 何を言っているのだ。私を非現実世界の玩具の中に入れるとは、少々、度が過ぎやしないか?」
【光大】「いやいや、十分、非現実的……」
すると、女性の人差し指が口元に……。
【光大】「! な、なんだよ……」
※謎の女性(乙愛)、真剣
【謎の女性】「静かにしろって意味。妙な気配を感じないか?」
【光大】「妙な気配……?」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示しない
※風の音
ヒュッ、ヒュ――――――ン、ヒュッ、ヒュ――――――ン!
この規則正しい風の吹き方は……。
学校でのテンポとは違うが、まさか後ろに?
【光大】「!」
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■宮島 宮島水族館跡 風の塊、再び 夏 昼
※横ワイプ(さっと表示)
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【光大】「またかよ!?」
学校でも現れた、竜巻のようにぐるぐる回っているおかしな小さい風の塊が。
どうやら、あの風がこの規則正しい風を吹かしているのだろう。
【謎の女性】「ふむ……」
女性は、右腕の白いリストバンドを見つめる。
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■宮島 宮島水族館跡 リストバンド、青く光る 夏 昼
※横ワイプ(さっと表示)
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
白いリストバンドに埋め込まれている、青い球体が光り出している。
【光大】「な、なんだよこれ……」
【謎の女性】「ふむ。試す価値がありそうだな」
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼
【光大】「な、何を……?」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示。真剣
【謎の女性】「……」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示しない
女性は俺の質問をスルーして、風の塊と対峙する。
【光大】「お、おい! あの風と勝負する気なのか!? 風に巻き上げられて、スカートがめくられ……って、あんたのはタイトだから、そんなことはないか。でも、人間には別に何とも……」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示。真剣
【謎の女性】「だからこそ、倒さないといけないのだ」
【光大】「え? 何でだよ?」
※謎の女性(乙愛)、不満
【謎の女性】「いいから、黙って見てろ」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示しない
女性は静かに右腕を突きだした。
今から何をやろうっていうんだ。あのリストバンドに何かからくりでも?
彼女は、ふう、一息つき、そして――、
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 謎の女性(乙愛)、呪文を唱える 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【謎の女性】「異霊空間(コンファインド・スペース)、展開(アンフォールド)!!」
【光大】「!?」
※フェードアウト(さっと暗くなる)
■画面が暗い
※展開する音
バン!!
【光大】「!」
※フェードイン(さっと次のCGに切り替わる)
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼 背景が青紫色
女性が奇妙な呪文を言った瞬間、彼女を中心に青紫の空間が広がる。自然も、建物も、道も、全てが。
一体、何をしたんだ?
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示。真剣
【謎の女性】「いたぞ」
え?
風の塊が……。
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 モンスター、出現 夏 昼 背景が青紫色
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
【光大】「んなっ!?」
なんなんだよコイツ。
塊が……モンスター化!?
全身緑色の、一本角の生えた、ツルピカ頭の小さな子供が雲に乗っている。見た目はいたずら小僧だが、昨日、よっしーと深夜までプレイした、次々と現れる妖怪どもを倒すゲーム、『妖怪無双』のキャラと。
※横ワイプ(さっと暗くなる)
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼 背景が青紫色
※横ワイプ(さっと表示)
※???(カマイタチ)の立ち絵を表示。いたずら顔
【???】「キキキッ」
緑のモンスターは、いたずらっぽい笑みを浮かべて俺たちを見やる。
あの風、こいつの仕業なのか?
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示、真剣
【謎の女性】「ふむ。風の超常異霊(ポルターガイスト)、カマイタチ。女ばかりを狙う、破廉恥小僧、か」
驚く俺とは対照的に、冷静にそのモンスターっぽいものの素性を分析する。
【光大】「ポ、ポる……? なんだよ、それ。というか、何で、あんなゲームに出てくるモンスターが……」
※謎の女性(乙愛)、真剣
【謎の女性】「すまんが、それは後だ!」
女性は再び右腕を突きだす。そして、
※謎の女性(乙愛)、叫ぶ
【謎の女性】「具現化せよ、対霊武器(バスターウェポン)!」
【光大】「バ、バスター……?」
※謎の女性(乙愛)の立ち絵を表示しない
※光る音
すると、リストバンドの青い球体が強く光り出す。
※フェードアウト(さっと暗くなる)
作品名:ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer. 作家名:永山あゆむ