ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.
■回想 宮島 移動する風を見てびっくりする光大と葦貴 夏 昼
※数秒ウェイト
※画面が一瞬白くなり、次のCGが切り替わる
■宮島 海沿いの街道 夏 昼
あんな不思議な動き、今の技術で可能なのか?
※葦貴の立ち絵を表示。考え込む
【葦貴】「うーん、どうなんだろうね。もしかしたら、どっかで風を遠隔操作をする人がいた、とか?」
【光大】「おいおい、そんなことできるの、訊いたことないぞ。ていうか、風は天候によって気まぐれに吹くものだろ?」
※葦貴、考え込む
【葦貴】「いや。そうでもないと思うよ。今の時代、未来的な技術が発展しているからね。オイシイ思いをしたいから、開発して実験した人が何処かにいたのかもよ。警察沙汰になることは間違いないけどね」
【光大】「そうかぁ〜?」
※葦貴の立ち絵を表示しない
まあ、でも、確かにそうかも、なのだが。
スマートフォンなどの携帯端末の映像を裸眼で浮かびあがる映像を見る機械、小浮遊した状態で、交通事故を起こすことなく自動で誘導できる『浮遊誘導型自動車』の開発に成功したもんなぁ。
その影響で、日本全土に研究所を設置し、そんなファンタジーものの話でしか存在しなかった『未来技術』の研究・開発の推進プロジェクト、『未来技術推進プロジェクト』を政府が立案して、小さな島々を中心に全国各地に『未来科学研究基地』を建設することが、4月に大々的にニュースで発表もされた。
その基地化発表の影響は、宮島も例外ではない。
※葦貴の立ち絵を表示。真剣
【葦貴】「そうに決まってるよ。これを見たらわかるでしょ?」
よっしーが指を差す。その先には――、
※フェードアウト
■宮島 未来化し、閑散となった表参道商店街 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※フェードイン
古い建物が取り壊されて、『未来化』していく商店街。
【光大】「ああ……そうだな」
昔は瓦屋の建物など、宮島に眠る歴史を感じさせる表参道商店街――別名、清盛通りと呼ばれるこの街並みも、今では無機質なガラス張りの建物が次々と建てられている。
おかげで宮島の歴史的価値と観光価値は薄れ、今では観光客も減少の一途をたどっている。かつては大賑わいだった商店街も閑散としている。
そして、宮島の85%の面積を誇る弥山(みせん)の原始林に囲まれた自然も次々と削られていき、野生のシカたちの殺処分と未来技術研究塔の建設が進んでいる。
――すべては、IT大国へ押しあげるという政府の『夢』のために。
もちろん、島民による反対活動はあった。だが、政府の強硬な手段に、なす術がなかった。
政府は私利私欲の未来を選び、歴史的価値の犠牲と人を見捨てたのだ。
自分たちの故郷がこんなにも変わっていくことに、淋しさを感じる。
もっと、現実的に考えないといけないことがいっぱいあるんじゃないのか?
この景色を見ると、校長が言った『夢』の実現ってのは結局、大人たちの理想の実現のために、俺たち子供を良いように扱う口実に過ぎないんじゃないのか? と思ってしまう。
そんなんだったら、俺は……。
……。
イライラする……。
【光大】「はやくここを抜けよう。なんだか、胸クソ気分が悪くなってきた」
【葦貴】「あ、うん……」
俺はすぐに自転車に乗り、猛スピードでこの大っ嫌いな風景を突っ切った。
【葦貴】「え!? ちょっと、コウ! ま、まってよー……うわあああっ!」
※画面が上下に揺れる
ガッシャ――――――ン!
俺はただひたすら必死に漕ぐ。
注意する島民の声すらも聞こえないほどに。
この現実から、逃げたい。
『夢』ばかり見る、この幻想世界から。
※フェードアウト
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼
※フェードイン
【光大】「はぁ、はぁ……」
ついムキになって飛ばし過ぎた。
よっしーの家も通り過ぎてしまったし、あいつには悪いことをしたな。今度、謝っておこう。
【光大】「みっともねえな、俺」
こんな自分に反省しつつ、俺は自転車から降りて、押していく。
【光大】「いつの間にかここまで来たな」
厳島神社を通った先にある、観光名所だった場所――宮島水族館。政府の『未来技術推進計画』の影響で、今年の3月に閉館した。
いずれはこの辺りも、『未来化』が進むに違いない。俺の好きな風景が、次々と失われていく。
本当に嫌になる。
【光大】「この風景を、守れたらな」
でも、俺にはそんな力は持っていない。『夢』を見る大人たちに抵抗しても、追い返されるだけだ。
もう、ここには現実的に物事を動かそうとする人間はいないのだろうか。
それとも、『未来技術』で対抗するべきなのか?
【光大】「なにバカなことを考えてんだよ」
そうだ。この世はゲーム世界ではない。小説の世界でもないのだ。
……というか、政府がそこまで考えていたらまさしく、滑稽だな。
こういうものは現実になくてもいいのだ。
そう、ファンタジーだけで――
※強い風の音
ゴオオオオオオオ――――――ッ!!
【光大】「!?」
さっきまで穏やかだった風が、急に強くなる。嵐でも来るのか?
不思議に思ったそのとき!
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 白い光 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※光輝く音
ピカ――――――――――――ッ!!
【光大】「うわっ!!」
俺の視界がいきなり白い光に包まれる。
あまりにも突然なので、思わず自転車から手を離してしまう。
【光大】「なんなんだよ、一体!」
……ったく、今日は忙しい日だ。
眩しい光を片目だけ閉じて堪えて、それを見つめる。
すると、
【光大】「なっ!」
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 人間をかたどる光 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
マジかよ。
俺は、二次元の世界にいるのか!?
人間をかたどる光が、中から現れるではないか。
その瞬間、
【光大】「うわあっ!!」
※画面が真っ白になる(フェードアウト)
■宮島 宮島水族館跡 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
※(画面が白い状態から)フェードイン
【光大】「あれっ?」
いつの間にか、元の景色に戻っている。
俺、夢でも見たのか?
白い光の女性が現れて――
【謎の女性(乙愛)】「ふう……」
【光大】「!」
※すぐにCGが切り替わる
■宮島 宮島水族館跡 謎の女性、現る 夏 昼
※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
作品名:ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer. 作家名:永山あゆむ