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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.

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   『夢』――俺の嫌いな言葉だ。
   自分のことをバカにされているみたいで、実に不愉快だからだ。
   この学校の大人たちはみな、『夢を持て』と言う。
   『総合』という名がついている通り、この学校には普通の進学校で教えられない、パソコン、技術、家庭、デザイン、福祉などたくさんの専門科目がある。
   そういった様々な科目を通して、『夢』というものを学生たちに見つけ、それに向かって支援するというコンセプトのもと、創立したのだ。
   それにより、花楓は『パティシエ』、葦貴は『ゲームクリエイター』になるという夢を見つけた。
   しかし。

【光大】「……」

   ……中には俺みたいに見つけられないヤツもいる。成績だけがとりえの、ただの落ちこぼれが。
   どうしろっていうんだ。

   ※立ち絵を表示しない。

【校長】「この時代を生きていくためには『夢』は必要です」
【校長】「日本は今、それがないと社会に置き去りにされる時代になっております。やりたいことを見つけないと、暗い人生を送ってしまいますよ」

   だったら、何とかしてくれよと言いたい。
   『夢』がないと死んでしまいますよ、と言っているようなもんじゃないか。

【光大】(くそ、なんだよ、『夢』って……)

   気持ちを押し殺しながら、校長を始めとした大人たちが突きつけた『夢』の必要性を最後まで苦々しく聞くのだった。

   ※フェードアウト

■宮島 澄み渡る真夏の青空 夏 昼

   ※フェードイン

   放課後。
   廊下に立たされた羞恥と大人(校長)への嫌悪を、剣道の部活でストレスを発散した俺は、靴を履きかえ、学校の校舎を出た。
   青空が見えるなかで帰宅するのは久しぶりだ。
   剣道部は夜遅くまで練習をしている。
   しかし今日は特別、明日から夏休みが始まるからであろうか、監督が早めに練習を切り上げてくれた。
   去年もそうだったが、地獄の特訓前に用意したお情けなのかもしれない。

   ※横ワイプ(さっと暗くなる)

■宮島 宮島総合文化高校 駐輪場 夏 昼

   ※横ワイプ(さっと表示)

【光大】「えーと、どこに置いたっけ?」

   遅刻ギリギリだったもんなあ。記憶する暇もなかった。
   しかたないので、端から探していく。

【光大】「番号は確か、277番だったな」

   後ろタイヤについている学校認定のステッカーの番号を頼りに奥から探す。
   左端から真ん中へと辿っていく。

【光大】「おっ、あった」

   ビンゴ!
   ポケットにある鍵を取り出そうとするが。

【光大】「うおっと!」

   ※鍵が落ちる音

   手が滑って後ろに転がり落ちてしまった。
   溝に落ちなかったのが幸いだ。
   取りに行こうとすると、

   ※すぐにCGが切り替わる

■宮島 宮島総合文化高校 花楓と葦貴 夏 昼

   ※このシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない

【花楓】「こうちゃん」

   カエが拾ってくれた。隣によっしーがいる。
   そういえば、帰りによく会うってよっしーが言ってたな。

   ※すぐにCGが切り替わる

■宮島 宮島総合文化高校 駐輪場 夏 昼

【光大】「サンキュー」

   ※花楓の立ち絵を表示。微笑む
   ※葦貴の立ち絵を表示。通常

【葦貴】「今日は早いんだね」
【光大】「まあな。地獄の練習前にしっかり休んどけってことさ」

   幼馴染みと会話しながら、俺は自転車のところへ向かう。

   ※花楓の立ち絵を表示しない
   ※葦貴、苦笑

【葦貴】「そっか。コウのとこの部活って、監督が厳しいもんね」
【光大】「そんなところだ。まあ、楽しいからいいけど」

   この時だけは本当に夢中になれる。
   試合の大一番で勝った時は、スカッとするし。
   その爽快感を求めていたおかげで、昨年は全国大会まで行けたのかもしれない。

   ※葦貴、苦笑

【葦貴】「そうだよね。コウは、剣道だけが取り柄だもんね」
【光大】「だけは、余計だ」

   勉強も少しはできるっつーの。常に10位以内のカエほどではないけど。
   俺とよっしーは自転車の鍵を開け、俺たちを待っている花楓のところへと向かった。

   ※横ワイプ(さっと暗くなる)

■宮島 宮島総合文化高校 校門までの道 夏 昼

   ※横ワイプ(さっと表示)

   部活が昼に終わるように、幼馴染み三人とこうして帰るのもずいぶんと久しぶりだ。

   ※葦貴と花楓を表示

   やっぱり、ここが俺の居場所なんだなと思う。
   会話するのも楽しいし、二人と一緒にいるだけで、気楽になれる。

【光大】「それにしても……今日は散々な目にあったな……」

   ※葦貴、苦笑

【葦貴】「ははは。お疲れだったね」
【光大】「おまえはいいよな、注意されただけで済むから」

   ※葦貴、微笑む

【葦貴】「ボクんとこの先生は、優しいからね。鬼の丸峰先生でなくてほんとによかったよ」
【光大】「お前がうらやましいぜ。俺なんか、俺なんかなあ……」

   「もう忘れたい!」と言わんばかりの泣く素振りをして見せる。

   ※葦貴、苦笑

【葦貴】「ははは」
【光大】「うう……もう絶対にあいつの、雷という名の鐘を鳴らすのはやめよう」

   ※花楓、不満

【花楓】「まったくよ。幼馴染みとして恥ずかしいわよ」

   花楓は額に手を当て、はあ、とため息を漏らす。
   改めて見ると、この3人の中で一番しっかりしているのはカエだ。同い年なのに、俺たち二人の姉さんみたいな。誕生日を迎えるのも一番早いし。

   ※花楓、不満

【花楓】「これから進路を決める大事な時期に入るのよ。二人とも、もう少ししっかりしないとこの先……」

   また始まった。花楓の小言が。真面目さゆえ、だけど。
   ああーもう、丸峰の雷といい、校長のおめでたい話といい、これ以上、精神的なストレスはためたくないので、

【光大】「はいはい、堅苦しい話はまた今度な。それにしても……何か変じゃないか?」

   強引に話題を変えてみる。

   ※葦貴、きょとん

【葦貴】「変って、どこが……」
【光大】「風だよ、風。普通、こんなに規則正しく吹いているか?」

   周囲にいる学生もちらほらそれを話題にしている。

   ※風の音

   ヒュッ、ヒュッ、ヒュ―――ン、ヒュッ、ヒュッ、ヒュ―――ン、と指揮者が操っているかのように吹いているのだ。
   こんな奇怪なこと、現実にあるか?
   そもそもファンタジーやありえない出来事は、二次元にしか存在しないのだ。俺はそう割り切っている。
   だから俺の中では、「信じられないこと」ではあるんだけど。

   ※花楓、考え込む

【花楓】「うん。立ち止まってみたら、確かにリズムよく吹いているわね」

   ※葦貴、きょとん

【葦貴】「嵐でもくるのかな?」
【光大】「え? こんな青空なのに?」