夏の陽射し
第2章 アクシデント
「ふえーーん・・・」
実澪が部屋で涙を流す。
「しょうがないだろ。風邪ひいてるんだぞ?」
「だって!私見にいけないじゃん・・・」
「まあ、今回はしょうがないな。あと2日で治せるならいいけど。」
「治す!絶対に!」
「でもさ、俺は多分・・・というか絶対に出れないぞ?先輩がいるし。」
「それでもいい!私、見に行きたい!!」
ここまで実澪が駄々をこねるのは見たことがない。それだけ今回の試合を楽しみにしていてくれたんだろう。
実澪の気持ちが痛いほど伝わってくるから、俺はできるだけのことをしようと思った。
「・・・はぁ・・・。わかった、母さんとおばさんに頼んで、なんとかするよ。」
「本当に!?行ってもいいの!?」
「ああ。ただし!!試合当日までに熱が下がらなかったら・・・」
「大丈夫!私なんとかするから!ありがとうカズ!!」
実澪が俺に抱きついてくる。
「う、うわ!こら!病人は安静にしてなさい!」
「あはは、カズ、あったかくて気持ちいい!」
「なんとかならないかな。」
俺は母さんとおばさんに頭を下げる。
「あんた、そういうことをして、もし実澪ちゃんに何かあったら責任取れるの?」
母さんが俺に詰め寄る。
「責任、って・・・」
「そうでしょう?もしその日無理をして、肺炎とかになったら苦しむのは実澪ちゃん本人なのよ?」
「まあ、実澪の体は私に似て丈夫だからそんなことにはならないとは思うけど・・・」
おばさんは軽く笑いながら言う。
「でも、私も今回は賛成できないな。」
「でも、当日までに熱が下がったら・・・」
「熱が下がったら、まあいいことにしましょう。ね?それで手を打ちましょう?」
おばさんが妥協案を提案してくれる。
母さんはまだ何か言いたそうだったが、それ以上何も言わなかった。
「でもねぇ・・・ねえ?祐子ちゃん、あの小さかったこの子達が、まさか付き合うことになるとはねえ。」
祐子というのは俺の母さんの名前だ。
「ほんとに。大きくなったわねぇ・・・。しかも実澪ちゃんなら私も安心だわ。」
親の会話を聞いて、俺は恥ずかしくてたまらなくなり、その場から逃げるように出ていく。
実澪の部屋へ入ると、
「どうだった?」
と聞いてきた。
「ああ、やっぱり当日までに熱が下がらないと行かせられないって。」
「・・・やっぱり。」
少し下をむいて何かを考える風をみせる。
「まあ、当日は気持ちだけでも応援してくれ。」
「うん・・・」