アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一
「……僕で構わなければ、それは構いませんが。奥さんのご意見は聞かなくてもいいんですか?」
「……アレは、ああいう性格でね。私に任せるつもりだろう」
何処か、諦念を抱えたように、健一がため息をついた。
それから一旦目を伏せ、改めて目を開いてあずさの方を見る。
「それでいいね、あずさ」
「……はい、お父さん」
あずさは父親と同じように一旦目を伏せて、答えると同時に小さく頷いた。
作品名:アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一 作家名:辻原貴之