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アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一

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 それが解決したことも含め、偶然というおまけでしかない。
「そうですね。これも『運命のいたずら』って奴なのかも知れませんが、悪い気はしませんね。でも、俺は、これで平田が本当に戻れるのなら、それは『運命のいたずら』っていう『油』の前で、先生たちが『小さな火』を絶やさずに頑張ってくれてたお陰だと思いますよ」
「まぁ、生意気なこと言うのね!」
「ぃてっ!」
 担任が出席簿で、軽く祐一の頭を叩き、叩かれた祐一は軽く舌を出した。
 でも、祐一が言ったのは本心でも有る。
 いくら噂をこちらで立てようと、元々の運動という基盤がなければ、これほど早く事態は動かないだろう。
 支援したくとも、誰かが基金を立ち上げ、正しく活動しなければ、正しい形で募金ができないのと同じだ。
 祐一は相棒に頼んで、その小さな火に油を注いだだけ。
 邪道のやり口だ。
(まぁ、目立つわけには行かないけど、『この程度ならアリ』かな…)
 逃亡中の身であれど、ホンのたまになら、こういう事が有ってもいいではないか。
 肋骨の骨折が癒える数カ月後、遅くとも夏には訪れるであろう、平田の空手に打ち込む姿を想像し、祐一は薄く、微笑んだ。


【302号室 藤井祐一(3)】−『平田健の事情』− END