死人
そんなものがあるとは思えなかった。
ある筈がなかった。
「事故現場を戸澤が撮ったんだ。はっきり写ってる」
どうすると、彼は僕に尋ねた。
「見るのか」
僕は何も答えなかった。
本当にあるのか。
見ようか。見て確かめようか。
何かの見間違いだろうから。
でも、見たくない。
何も答えない僕を少しの間黙って見ていた彼は、傍にあった机の引き出しを開けて、小さな封筒を取り出した。
「見たくないのは分かるよ。でも見るべきだ」
そう言って彼は封筒をこちらによこしてきた。
受け取ろうかどうしようか、迷って、でも受け取った。
手は震えていなかったが、封筒がなんだか重く感じた。