死人
「その戸澤とかいうのが見ただけなんだろ?他に誰か見てないのか?」
末西君は苦しそうだった。
姉弟の僕が、姉は生きていると言っているのに、その聞いたこともない誰かが姉の死を目撃したと言っている話の方を信じるというのだろうか。
「もう一回言うけど、今日も姉貴とは顔を合わせてるんだぜ?現に生きているわけだから、そもそも目撃者なんて意味が無いよ」
そうだろと、僕は念を押すように言った。
彼はまだ、僕の言っていることを認めたくないようだった。
そして彼は苦しそうな顔でこう言った。
「写真が――あるんだ」
写真があるんだよと、彼は繰り返した。語尾は掠れていた。
「写真?」