死人
いつも通りコンビニに向かって歩く。
アパートから少し離れた時だった。
「ねえ」
背後で声がした。
声だけで分かる。
また、姉だった。
全く油断していた僕だから、昨日にもまして大きな声を出してしまったのは当然の成り行きだった。
意図的に僕の隙を突こうとしているのではないかとさえ思う。
振り返って、なんだよと聞いた。
「あんたさあ、あそこから出てきたよね?あれが昨日言ってた友達の家なの?」
「そうだけど」
そう答えてから、姉に友達の家を教えてしまって良かったのだろうかと不安になった。
しかし、僕があのアパートから出てくるところを見られているのだから、手遅れだと気付いて、まあ仕方ないかと思った。